集合と集合の関係

先程学んだように、集合とはものの集まりであった。2つの集合があるとき、この2つの集合が全く別の集まりを表すこともあれば、要素を共有することもある。ここでは、2つの集合の間の関係について考えてみよう。

部分集合

部分集合について

部分集合についての図
部分集合についての図

2つの集合 $A$、$B$ について、$A$ からどのような要素 $x$ をとってきても、その要素 $x$ が $B$ の要素であるとき、つまり \[x\in{A}ならばx\in{B}\] が成り立つとき、$A$ は $B$ の部分集合 (subset) であるといい \[A\subseteqq{B}\] と表す。このとき、$A$ と $B$ の関係は図のようになり、$B$ は $A$ を含む (contain) という。

また、この定義から集合 $A$ は自分自身の部分集合、すなわち $A\subseteqq{A}$ がいえる。

なお、要素をもたない集合である空集合 $\emptyset$ は、どのような集合に対しても部分集合であると約束する。つまり、任意の集合 $A$ に対し、$\emptyset\subseteqq{A}$ とする。

《例》$X=\{1,2,3\}$、$Y=\{1,2,3\}$、$Z=\{1,2\}$ のとき \[X\subseteqq{Y}~,~{Z}\subseteqq{Y}~,~\emptyset\subseteqq{Z}\]

集合の相等

2つの集合 $A$、$B$ において、$A\subseteqq{B}$ かつ $B\subseteqq{A}$ のときは、$A$ と $B$ の要素が完全に一致している。

集合の相等の図
集合の相等の図

このとき、$A$ と $B$ は等しい (equal) といい \[A=B\] と表す。また、等しくないときは $A\neq{B}$ と表す。

《例》$X=\{1,2,3\}$、$Y=\{1,2,3\}$、$Z=\{2,3,4\}$ のとき \[X=Y~,~Y\neq{Z}\]

真部分集合

2つの集合 $A$、$B$ において、$A\subseteqq{B}$ であるが $A\neq{B}$ のとき、$A$ は $B$ の真部分集合 (proper subset) であるといい \[A\subset{B}\] と表す。また、真部分集合でないときは $A\not\subset{B}$ と表す。

《例》$X=\{1,2,3\}$、$Y=\{1,2,3\}$、$Z=\{1,2\}$ のとき \[X\not\subset{Y}~,~{Z}\subset{Y}\]

吹き出し真部分集合

集合における部分集合 $(\subseteqq)$ と真部分集合 $(\subset)$ の違いは、実数における $\leqq$ と $\lt$ の違いに似ていると考えると覚えやすい。

共通部分と和集合

共通部分

2つの集合 $A$、$B$ について、$A$ と $B$ の両方に属する要素全体の集合を、$A$ と $B$ の共通部分 (common part) といい、$A\cap{B}$ と表す。

共通部分を表す図
共通部分を表す図

つまり \[A\cap{B}=\{x|x\in{A}かつx\in{B}\}\] である。$A$ と $B$ に共通の要素がない場合には $A\cap{B}=\emptyset$ となる。特に、$A\cap{A}=A$ である。

《例》$X=\{1,2,3,4,5\}$、$Y=\{1,3,5,6\}$、$Z=\{2,4\}$ のとき \[X\cap{Y}=\{1,3,5\}~,~Y\cap{Z}=\emptyset\]

和集合

2つの集合 $A$、$B$ について、$A$ と $B$ の少なくとも一方に属する要素全体の集合を、$A$ と $B$ の和集合 (sum of sets) といい、$A\cup{B}$ と表す。

和集合を表す図
和集合を表す図

つまり \[A\cup{B}=\{x|x\in{A}またはx\in{B}\}\] である。特に、$A\cup{A}=A$ である。

《例》$X=\{1,2,3,4,5\}$、$Y=\{1,3,5,6\}$ のとき \[X\cup{Y}=\{1,2,3,4,5,6\}\]

吹き出し和集合

$\cup$ はコップのような形をしていて、$\cap$ はこれを裏返したような形をしている。$\cup$ には水がいっぱい入るが、$\cap$ には水がほとんど入らない。これと対応させて、要素の個数が多くなる方が $\cup$、少なくなる方が $\cap$ と覚えよう。

暗記集合の性質~その1~

集合の性質
集合の性質

次の等式が成り立つことを、図をつかって確認せよ。

  1. $(A\cup{B})\cup{C}=A\cup(B\cup{C})$
    $(A\cap{B})\cap{C}=A\cap(B\cap{C})$
  2. $A\cup(B\cap{C})=(A\cup{B})\cap(A\cup{C})$
    $A\cap(B\cup{C})=(A\cap{B})\cup(A\cap{C})$

  1. $(A\cup{B})\cup{C}$ と $A\cup(B\cup{C})$ は図において、ともに $a$、$b$、$c$、$p$、$q$、$r$、$s$ のすべてを表し等しい。
    また、$(A\cap{B})\cap{C}$ と $A\cap(B\cap{C})$ は図において、ともに $s$ の部分を表し等しい。
  2. $A\cup(B\cap{C})$ と $(A\cup{B})\cap(A\cup{C})$ は図において、ともに $a$、$p$、$q$、$r$、$s$ の部分を表し等しい。
    また、$A\cap(B\cup{C})$ と $(A\cap{B})\cup(A\cap{C})$ は図において、ともに $q$、$r$、$s$ の部分を表し等しい。

集合の性質~その1~

集合 $A$、$B$、$C$ に関して次のことが成り立つ。

  1. $(A\cup{B})\cup{C}=A\cup(B\cup{C})$、$(A\cap{B})\cap{C}=A\cap(B\cap{C})$
  2. $A\cup(B\cap{C})=(A\cup{B})\cap(A\cup{C})$、$A\cap(B\cup{C})=(A\cap{B})\cup(A\cap{C})$

i は $\cup$ どうしや $\cap$ どうしの演算では、順序は関係のないことを意味しているので、かっこを省略してそれぞれ $A\cup{B}\cup{C}$、$A\cap{B}\cap{C}$ と表すことがある。また、ii は、式の展開法則 $A\times(B+C)=A\times{B}+A\times{C}$ と似ていることに注意すると覚えやすい。

補集合

共通部分と補集合

1つの集合 $U$ を定めておいて、$U$ の要素や、$U$ の部分集合だけを考えるとき、$U$ を全体集合 (universal set) という。全体集合 $U$ の部分集合 $A$ に対して、$U$ の要素ではあるが $A$ に属さない要素全体の集合を $A$ の補集合 (complement) といい、$\overline{A}$ で表す。

補集合を表す図
補集合を表す図

つまり \[\overline{A}=\{x|x\in{U}かつx\not\in{A}\}\] である。

《例》$X=\{1,2,3,4,5\}$、$Y=\{1,3,5\}$ のとき、全体集合 $X$ に関する $Y$ の補集合 $\overline{Y}$ は \[\overline{Y}=\{2,4\}\]

暗記集合の性質~その2~

集合の性質~その2~
集合の性質~その2~

次の等式が成り立つことを、図をつかって確認せよ。

  1. $\overline{\left(\overline{A}\right)}=A$
  2. $A\cup\overline{A}=U$、$A\cap\overline{A}=\emptyset$
  3. $\overline{A\cup{B}}=\overline{A}\cap\overline{B}$、 $\overline{A\cap{B}}=\overline{A}\cup\overline{B}$

  1. まず、$A$ の補集合 $\overline{A}$ は
    $A$ の補集合
    であるから、$A$ の補集合の補集合 $\overline{\left(\overline{A}\right)}$ は
    $A$ の補集合の補集合
    であり、これは $A$ と一致する。
  2. $A$ と $\overline{A}$ はそれぞれ
    $A$ と $A$ の補集合
    であるから、$A$ と $\overline{A}$ の和集合 $A\cup\overline{A}$ と、共通部分 $A\cap\overline{A}$ はそれぞれ
    $A$ と $\overline{A}$ の和集合と共通部分
    であり、これらは $U$、$\emptyset$ と一致する。
  3. まず、$A\cup{B}$ は
    $A$ と $B$ の和集合
    であるから、その補集合 $\overline{A\cup{B}}$ は
    $A$ と $B$ の和集合の補集合
    である。

    また、$\overline{A}$、$\overline{B}$ はそれぞれ
    $A$ の補集合と $B$ の補集合
    であるから、これらの共通部分 $\overline{A}\cap\overline{B}$ は
    $A$ の補集合と $B$ の補集合の共通部分
    であり、これは先程の $\overline{A\cup{B}}$ に一致する。

    最後に $\overline{A\cap{B}}=\overline{A}\cup\overline{B}$ を確認する。まず、$A\cap{B}$ は
    $A$ と $B$ の共通部分
    であるから、その補集合 $\overline{A\cap{B}}$ は
    $A$ と $B$ の共通部分の補集合
    である。

    また、$\overline{A}$、$\overline{B}$ はそれぞれ
    $A$ の補集合と $B$ の補集合
    であるから、これらの和集合 $\overline{A}\cup\overline{B}$ は
    $A$ の補集合と $B$ の補集合の和集合
    であり、これは先程の $\overline{A\cap{B}}$ に一致する。

集合の性質~その2~

集合 $A$、$B$ に関して次のことが成り立つ。

  • iii. $\overline{\left(\overline{A}\right)}=A$
  • iv. $A\cup\overline{A}=U$、$A\cap\overline{A}=\emptyset$
  • v. $\overline{A\cup{B}}=\overline{A}\cap\overline{B}$、$\overline{A\cap{B}}=\overline{A}\cup\overline{B}$
特に、このvの性質は有名で、ド・モルガンの法則 (law of de Morgan) と呼ばれている。

なお、iii の左辺にある集合 $A$ の補集合の補集合 $\overline{\left(\overline{A}\right)}$は、簡単に$\overline{\overline{A}}$ と書くことがある。

暗記3集合の場合のド・モルガンの法則

次の等式を集合の性質~その1~集合の性質~その2~ を用いて証明せよ。

  1. $\overline{A\cup{B}\cup{C}}=\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}$
  2. $\overline{A\cap{B}\cap{C}}=\overline{A}\cup\overline{B}\cup\overline{C}$

  1. まず $A\cup{B}$ を1かたまりとして考えていく。 \begin{align} &\overline{A\cup{B}\cup{C}}\\ =&\overline{(A\cup{B})\cup{C}}\\ =&\overline{A\cup{B}}\cap\overline{C}\\ =&\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C} \end{align}
  2. まず $A\cap{B}$ を1かたまりとして考えていく。 \begin{align} &\overline{A\cap{B}\cap{C}}\\ =&\overline{(A\cap{B})\cap{C}}\\ =&\overline{A\cap{B}}\cup\overline{C}\\ =&\overline{A}\cup\overline{B}\cup\overline{C} \end{align}

集合の直積

直積とは何か

2つの集合 $A$、$B$ について、$A$ の要素 $a$ と $B$ の要素 $b$ の、順序を考えた組 $(a,~b)$ 全体がつくる集合を、$A$ と $B$ の直積 (direct product) といい、$A\times{B}$ で表す。つまり \[A\times{B}=\{(a,b)|a\in{A}かつb\in{B}\}\] である。

《例》$X=\{1,2\}$、$Y=\{1,3,5\}$ のとき \begin{align} X\times{Y}=&\{(1,1),~(1,3),~(1,5),\\ &\qquad(2,1),~(2,3),~(2,5)\} \end{align}