数学I 第3章 集合の基礎 — 写像

この節の前提関数/集合と集合の関係

自動販売機にお金を入れボタンを押すと、商品がでてくる。自動販売機は内部の仕組みはわからなくても、「お金を入れボタンを押す」ことと「飲み物がでてくる」ことは何らかの規則で対応しているのはわかる。このように、途中の仕組みを無視して、何かと何かの対応のみに着目することが便利な場合もある。数学ではこの対応のことを写像と呼ぶ。

写像について

写像とは何か

ここでは、集合と集合の対応を調べることによって、写像や関数という考え方を学んでいこう。

例えば、東京駅からJRを使いさまざまな駅に向かうときの乗車券の料金(2026年9月現在)は次の表のようになっている。

向かう駅 料金(円)
渋谷
新宿
横浜
仙台
大阪
博多
札幌

このことを「集合」を用いて表すことを考えよう。

まず、向かう駅の集合 を とし、料金の集合 を とする。

このように集合 、 を作ると、図のように の各要素に の要素が1つずつ対応する。

集合Aに含まれる7つの地名から、集合Bに含まれる6つの数値へそれぞれ矢印が向かっている。集合Aの渋谷と新宿からの矢印は、どちらも集合Bの260を指している。 一般に、2つの集合 、 において、ある規則によって のどの要素にも、 の要素が1つずつ対応しているとき、この規則を から への写像 (mapping) といい、記号 などを用いて と書く。

写像 において、集合 を の定義域 (domain of definition) という。

また、写像 によって、 の要素 に対応する の要素を と書き、これを による の像 (image)、または の における値 (value) という。

さらに、この像(値)全体の集合 を写像 の値域 (range) という。

値域は の部分集合であるが、 全体と一致するとは限らない。 の要素の中には、 のどの要素の像にもなっていないものがあってもよい。

先程の例でいうなら、定義域は であり、値域は である。

また、この対応を与えている規則 による「横浜」の像、つまり は、 である。

なお、第2章『関数と方程式・不等式』で学んだ関数 も、 のとる値の集合から実数の集合への写像にほかならない。関数のときの定義域・値域は、ここでいう定義域・値域と同じものである。たとえば関数 の定義域を実数全体とすると、値域は 以上の実数全体であり、実数全体そのものではない。

問題1定義域・値域

定義域 を 以下の自然数とするとき、 の各要素に、その正の約数の個数を対応させる写像 の値域 を求めよ。

解答を見る

定義域 は である。

の各要素の正の約数と、その個数は表のようにまとめられるので、値域 は となる。

約数 約数の個数
、
、
、、
、
、、、
、
、、、
、、
、、、
集合Aの要素1から10と、集合Bの要素1から4が並び、Aの各要素からBの要素へ矢印が向いている。1は1へ、2・3・5・7は2へ、4・9は3へ、6・8・10は4へ矢印が指している。

いろいろな写像

1対1の写像(単射)

からどのような要素 、 をとってきても、 ならば となるとき を1対1の写像 (one-to-one mapping)、または単射 (injection) という。

集合Aの要素1, 2, 3, 4から集合Bの要素へ、1はb、2はc、3はa、4はdへそれぞれ矢印が向かっており、集合Bの要素eには矢印が向かっていない。

上への写像(全射)

のどのような要素 に対しても となるような の要素 が存在するとき を上への写像 (onto-mapping)、または全射 (surjection) という。

集合Aの要素1から5と集合Bの要素aからdに対して、1からb、2と5からc、3からa、4からdへ矢印が向かい、Bのすべての要素に矢印が到達しています。

上への1対1の写像(全単射)

上への写像であり、かつ1対1の写像でもあるものを、上への1対1写像 (onto and one-to-one correspondence)、または全単射 (bijection) という。

集合Aの要素1、2、3、4、5から、集合Bの要素a、b、c、d、eへ、1はb、2はc、3はa、4はe、5はdへと、それぞれ重複なく1本ずつ矢印が伸びている。 特に、集合 から集合 への全単射のことを、置換 (permutation) ともいう。

問題2単射・全射・全単射の判定

次の写像 が、単射か、全射か、全単射か、またはどれでもないかを答えよ。

  1. 、 とし、 、 、 とする写像
  2. 、 とし、 、 、 、 とする写像
  3. 、 とし、 、 、 、 とする写像
  4. 、 とし、 、 、 とする写像
  5. 実数全体の集合を とし、 で定める写像
  6. 実数全体の集合を とし、 で定める写像
解答を見る

単射かどうかは「 の同じ要素に の2つ以上の要素が対応していないか」、全射かどうかは「 のどの要素にも対応する の要素があるか」を調べればよい。

  1. の異なる要素には の異なる要素が対応しているので単射である。一方、 の要素 には対応する の要素がないので全射ではない。よって単射であるが全射ではない。

  2. のどの要素 、、 にも対応する の要素があるので全射である。一方、 であるが なので単射ではない。よって全射であるが単射ではない。

  3. なので単射ではない。また、 の要素 には対応する の要素がないので全射ではない。よってどれでもない。

  4. の異なる要素には の異なる要素が対応し、 のどの要素にも対応する の要素があるので、単射かつ全射、つまり全単射である。

  5. であるが なので単射ではない。また、どのような実数 に対しても なので、 に対応する実数 はなく、全射ではない。よってどれでもない。

  6. とすると より となるので、単射である。また、どのような実数 に対しても とすれば となるので、全射である。よって全単射である。

最終更新: 2026-09-30

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