集合と要素

犬やサルや鳥は、これらをひとまとめにして「動物」と表すことができる。このように、ものを寄せ集め、ひとくくりにしたものを集合という。ここでは、集合という考え方に対する注意や、集合に関する用語について学ぶ。

集合と要素の表し方

集合の表し方

(注)

“1から9までの自然数の集まり”や“すべての偶数の集まり”のように、それに含まれるものが明確であるとき、このものの集まりを集合 (set) といい、ものそれぞれをその集合の要素 (element) という。集合は、アルファベットの大文字 $A,B,C,\cdots,X,Y$ などを用いて表される。

集合の図
集合の図

例えば、集合 $A$ を \[「12の正の約数の集合」\tag{1}\label{syugonoarawasikata1}\] とした場合、$12$ の正の約数は $1,2,3,4,6,12$ であるから、$A$ は \[「1,2,3,4,6,12を要素とする集合」\tag{2}\label{syugonoarawasikata2}\] といっても同じことである。

$\eqref{syugonoarawasikata1}$ のように、要素の満たす条件を示して集合を決める方法のことを、内包ないほう的定義 (intensional definition) といい \[A=\{x|xは12の正の約数\}\] と表す。この方法では、$A$ の要素を代表して例えば $x$ などで表し、$\{~\}$ の中の縦線 $(|)$ の右側に、その $x$ の満たす条件を書く。

また、$\eqref{syugonoarawasikata2}$ のように、すべての要素を書き並べて集合を決める方法のことを、外延がいえん的定義 (extensional definition) といい \[A=\{1,2,3,4,6,12\}\] と表す。

(注)

また、「要素をもたない集合」というものも考えることとし、これをくう集合 (empty set) といい、記号 $\emptyset$ で表す。

空集合を表すのにギリシア文字の $\phi$ (ファイ)をあてている本もある。

(注)

数の集合は次のように、あらかじめ表し方を決めているものがある。

数の種類集合の表し方
自然数 natural number$\mathbb{N}$
整数 integer (独 zahlen)$\mathbb{Z}$
有理数 rational number$\mathbb{Q}$
実数 real number$\mathbb{R}$
数の種類について、詳しくはいろいろな数を参照のこと。

集合の表し方

  1. 次の集合を、要素の条件を示す方法で表せ。
    1. $A={1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}$
    2. $A={2,4,6,\cdots,100}$
    3. $A={2,3,5,7,11,13,17,19}$
  2. 次の集合を、要素を書き並べる方法で表せ。
    1. $A=\{x|xは18の正の約数\}$
    2. $A=\{2n|nは\mathbb{N}の要素であり1\leqq{n}\leqq6\}$
    3. $A=\{2n-1|nは正の整数\}$

1の要素の条件を示す方法では、答えが1通りになるとは限らず、いくつかの表し方があるのが普通である。

    1. \[\boldsymbol{A=\{x|10以下の自然数\}}\] 《別解》 \begin{align} &\boldsymbol{A=}\\ &\boldsymbol{\quad\{x|xは\mathbb{N}の要素であり1\leqq{x}\leqq{10}}\} \end{align} など
    2. \[\boldsymbol{A=\{2x|xは整数かつ,~1\leqq{x}\leqq50\}}\] 《別解》 \[\boldsymbol{A=\{x|xは100以下の正の偶数\}}\] など
    3. \[\boldsymbol{A=\{x|xは20以下の素数\}}\] $\blacktriangleleft$ 素数 (prime number) とは、1より大きい整数で、1とその数自身以外に約数をもたないような数をいう。
    1. \[\boldsymbol{A=\{1,2,3,6,9,18\}}\]
    2. \[\boldsymbol{A=\{2,4,8,16,32,64\}}\]
    3. \[\boldsymbol{A=\{1,3,5,7,\cdots\}}\] $\blacktriangleleft$ 要素の個数に限りのない集合もある

この例題にある、“18の正の約数”のように、有限個の要素からなる集合を有限集合 (finite set) といい、“自然数全体”の集合のように、要素の個数に限りが無い集合を無限集合 (infinite set) という。

要素の表し方

$a$ が集合 $A$ の要素であるとき、$a$ は集合 $A$ に属する (in) といい \[\boldsymbol{a\in{A}}\] と表す。また、$a$ が集合 $A$ の要素でないことは、$\in$ に斜線を引いて \[\boldsymbol{a\notin{A}}\] で表す。

集合に属するか否か
集合に属するか否か

例として、$A=\{x|xは12の正の約数\}$ とすると \[3\in{A}~,~5\notin{A}\] である。

集合の要素の表し方

集合 $A$、$B$ を

  • $A={x|xは正の偶数}$
  • $B={x|xは18の正の約数}$
とするとき、次の $\fbox{?}$ の中に $\in$ または $\notin$ のいずれかを入れよ。
  1. $2\fbox{?}A~,~2\fbox{?}B$
  2. $3\fbox{?}A~,~3\fbox{?}B$
  3. $4\fbox{?}A~,~4\fbox{?}B$
  4. $5\fbox{?}A~,~5\fbox{?}B$

わかりやすくするため、要素を書き並べてみると

  • $A={2,4,6,8,10,\cdots}$
  • $B={1,2,3,6,9,18}$
これをもとに問に答える。
  1. $2\boldsymbol{\in}A~,~2\boldsymbol{\in}B$
  2. $3\boldsymbol{\notin}A~,~3\boldsymbol{\in}B$
  3. $4\boldsymbol{\in}A~,~4\boldsymbol{\notin}B$
  4. $5\boldsymbol{\notin}A~,~5\boldsymbol{\notin}B$