確率変数の1次式の期待値

確率変数 $X$ のとる値が $x_1,x_2,\cdots,x_n$ のとき, $X$ の1次式 $aX+b$ は

\[ax_1+b,ax_2+b,\cdots,ax_n+b\]

という値をとる,別の新しい確率変数であると考える.

確率分布を $P(X=x_i)=p_i\quad(i=1,2,\cdots,n)$ とすると, $a\neq0$ ならば

\[P(aX+b=ax_i+b)=P(X=x_i)=p_i\]

が成り立つ.

よって,確率変数 $aX+b$ の期待値 $E(aX+b)$ は

\begin{align} E(aX+b)=&(ax_1+b)p_1+(ax_2+b)p_2\\ &\qquad\qquad+\cdots+(ax_n+b)p_n \end{align}

となる.

確率変数の1次式の期待値

さいころ投げを1回行い,出た目を確率変数 $X$ とするとき, $E(2X+1)$ を求めよ.

$2X+1$ の確率分布は次のようになる.

\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|}\hline X&3&5&7&9&11&13\\\hline P&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}\\\hline \end{array}

これより

\begin{align} E(2X+1)&=\frac{1}{6}(3+5+7+9+11+13)\\ &=\boldsymbol{8} \end{align}

$\blacktriangleleft$ (参考) $X$ の確率分布

\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|}\hline X&1&2&3&4&5&6\\\hline P&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}&\frac{1}{6}\\\hline \end{array} \[E(X)=\frac{1}{6}(1+2+3+4+5+6)=\frac{7}{2}\]

いま,この例題において,確率変数 $2X+1$ の計算の様子をわかりやすくするため

2X+12 $\cdot$ 1+12 $\cdot$ 2+12 $\cdot$ 3+12 $\cdot$ 4+12 $\cdot$ 5+12 $\cdot$ 6+1
P $\dfrac{1}{6}$ $\dfrac{1}{6}$ $\dfrac{1}{6}$ $\dfrac{1}{6}$ $\dfrac{1}{6}$ $\dfrac{1}{6}$

となおしてから,期待値 $E(2X+1)$ を計算してみると

\begin{align} &E(2X+1)\\ =&\ \frac{1}{6}\{\ (2\cdot1+1)+(2\cdot2+1)+\\ &\qquad(2\cdot3+1)+(2\cdot4+1)+\\ &\qquad(2\cdot5+1)+(2\cdot6+1)\ \}\\ =&\ \frac{1}{6}\left\{2(1+2+3+4+5+6)+6\right\}\\ &\uparrow Xの係数2でくくれる部分をくくった\\ =&\ 2\cdot\frac{1}{6}(1+2+3+4+5+6)+1\\ =&\ 2E(X)+1 \end{align}

つまり, $E(2X+1)=2E(X)+1$ が成り立つ.

暗記確率変数の1次式の期待値

$X$ を確率変数, $a,b$ を定数とするとき

\[E(aX+b)=aE(X)+b\]

が成り立つことを証明せよ.

確率変数 $X$ の確率分布を

\[P(X=x_i)=p_i\quad(i=1,2,\cdots,n)\]

とする( $n$ は自然数)このとき

\begin{align} &E(aX+b)\\ =&(ax_1+b)p_1+(ax_2+b)p_2\\ &\qquad+\cdots+(ax_n+b)p_n\\ =&(ax_1p_1+bp_1)+(ax_2p_2+bp_2)\\ &\qquad+\cdots+(ax_np_n+bp_n)\\ =&a(x_1p_1+x_2p_2+\cdots+x_np_n)\\ &\qquad+b(p_1+p_2+\cdots+p_n)\\ &\blacktriangleleft Xの係数aでくくれる部分をくくった\\ &\qquad(bでもくくった)\\ =&aE(X)+b \end{align}

確率変数の1次式の期待値の公式

$X$ を確率変数, $a,b$ を定数とするとき

\[E(aX+b)=aE(X)+b\]

が成り立つ.

吹き出し無題

この公式は,確率変数を $a$ 倍すれば,期待値(平均)は $a$ 倍になり, 確率変数に $b$ を加えれば,期待値は $b$ だけ大きくなることを主張している. 感覚的には明らかといえるだろう.