数学的帰納法の例
次の問題を考えてみよう.
数学的帰納法の例
すべての自然数 n において
n∑k=1k(k+1)=13n(n+1)(n+2)を証明せよ
本当にこの (1) が成立するかどうか,試しに n=1 を代入してみると
(左辺)=1∑k=1k(k+1)=1⋅2=2(右辺)=13⋅1⋅2⋅3=2となり成立している.
次に, n=2 の場合も
(左辺)=2∑k=1k(k+1)=1⋅2+2⋅3=8(右辺)=13⋅2⋅3⋅4=8で成立している.
また, n=3 の場合も
(左辺)=3∑k=1k(k+1)=1⋅2+2⋅3+3⋅4=20(右辺)=13⋅3⋅4⋅5=20で確かに成立している.
しかし, n が 1,2,3 の場合に成立したからといって, (1) が全ての自然数で成立するかはまだわからない.なぜなら, n=4 以上の場合の成立についてはまだ確かめていないからである.
かといって,4以上の n について1つずつ調べていったとしても,無限にある自然数を調べ尽くすことはできない.
ここで威力を発揮するのが数学的帰納法(mathematical induction)である.
ある自然数 m の場合に (1) が成り立つと仮定したとき,その次の自然数 m+1 の場合にも (1) が成り立つ.
ことを証明しよう.
これさえ証明してしまえば, n=1 の場合には (1) が成り立つことがすでに証明されているので,その次の n=2 の場合も成り立つ.
◯ は成立が示されたもの.●は成立がまだ示されていないものとして並べると,次のようになる.

また, n=2 の場合が成り立つならば,同様にしてその次の n=3 の場合も成り立つ.

以降,冒頭のドミノ倒しの例のように,次々と (1) が成り立つことが示される.この論法に終わりはないので,すべての自然数 n に対して (1) が成り立つと結論付けてよい.