増減表の書き方

導関数の符号の変化がわかると、かなり正確なグラフを描くことができるようになる。ここでは、関数の増減をまとめるための増減表 (table of increasing and decreasing) の書き方について、次の例題を通じて学んでいこう。

導関数を利用したグラフの書き方

関数 $f(x)=x^3-6x^2+9x$ において、次の問いに答えよ。

  1. $f'(x)$ を求めよ。
  2. $f'(x)=0$ となる $x$ の値を求めよ。
  3. $f'(x)\gt0$ となる $x$ の値の範囲、および $f'(x)\lt0$ となる $x$ の値の範囲を求めよ。
  4. $f'(x)=0$ となるときの、$f(x)$ の値を求めよ。
  5. 1~4を利用して、下の増減表の空欄を埋めよ。
    $x$$\cdots$$\cdots$$\cdots$
    $f'(x)$
    $f(x)$
    ただし
    1. $x$ の欄には、2で求めた値
    2. $f'(x)$ の欄には、$-$、$0$、$+$ のいずれか
    3. $f(x)$ の欄には $\nearrow$ (増加を表す記号)、$\searrow$ (減少を表す記号)、値が入る。
  6. 5を利用して、$y=f(x)$ のグラフを描け。

  1. $f(x)=x^3-6x^2+9x$ を微分すると \[f'(x)=\boldsymbol{3x^2-12x+9}\] となる。
  2. 1より \begin{align} f'(x)=&3x^2-12x+9\\ =&3(x-1)(x-3) \end{align} と因数分解できるので、$f'(x)=0$ となる $x$ は、$x=\boldsymbol{1,~3}$。
  3. $\blacktriangleleft$ 下のように $y=f'(x)$ のグラフを考えてもよい
    3の図
    まず、2より $f'(x)=0$ となる $x$ は $1,3$ であり、これを数直線上に表すと

    3の図

    となる。これより
    1. (1)つまり $x\lt1$ のとき \[f'(x)=3\underbrace{(x-1)}_{負}\underbrace{(x-3)}_{負}\] となり、$f'(x)\gt0$ となるのがわかる。
    2. (2)つまり $1\lt{x}\lt3$ のとき \[f'(x)=3\underbrace{(x-1)}_{正}\underbrace{(x-3)}_{負}\] となり、$f'(x)\lt0$ となるのがわかる。
    3. (3)つまり $3\lt{x}$ のとき \[f'(x)=3\underbrace{(x-1)}_{正}\underbrace{(x-3)}_{正}\] となり、$f'(x)\gt0$ となるのがわかる。
    以上 i~iii より、$f'(x)\gt0$ となるのは $x\lt1$、$3\lt{x}$ のときであり、$f'(x)\lt0$ となるのは $1\lt{x}\lt3$ のときである。
  4. 2より、$f'(x)=0$ となるのは、$x=1,~3$ のときだから \[f(1)=1^3-6\cdot1^2+9\cdot1=\boldsymbol{4}\] \[f(3)=3^3-6\cdot3^2+9\cdot3=\boldsymbol{0}\] と求まる。
    • $\boldsymbol{\text{STEP}1}$ $\boldsymbol{x}$ の欄を埋める

      ここには、$f'(x)=0$ となる $x$ を入れる。2の結果より

      $x$$\cdots$$\boldsymbol{1}$$\cdots$$\boldsymbol{3}$$\cdots$
      $f'(x)$
      $f(x)$
      となる。

    • $\boldsymbol{\text{STEP}2}$ $f'(x)$ の欄を埋める

      $\text{STEP}1$ で埋めた欄のすぐ下の欄には $0$ が入る。なぜなら、$\text{STEP}1$ で埋めた $x$ の値は、$f'(x)$ が $0$ になるときの $x$ の値だからである。また、それ以外の部分には3の結果を利用して正ならば $+$、負ならば $-$ を埋める。

      $x$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$
      $f'(x)$$\boldsymbol{+}$$\boldsymbol{0}$$\boldsymbol{-}$$\boldsymbol{0}$$\boldsymbol{+}$
      $f(x)$
    • $\boldsymbol{\text{STEP}3}$ $f(x)$ の欄を埋める

      $\text{STEP}2$ より $x=1$ や $x=3$ の値の前後では、$f'(x)$ の符号が変わっているので、$f(x)$ は $x=1$ で極大、$x=3$ で極小となる。まず、4で得た極大値 $f(1)=4$ や、極小値 $f(3)=0$ を増減表に埋める。

      $x$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$
      $f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
      $f(x)$$\boldsymbol{4}$$\boldsymbol{0}$

      最後に $f'(x)$ が $+$ の欄の下には、$f(x)$ が増加するという意味で $\nearrow$、$f'(x)$ が $-$ の欄の下には、$f(x)$ が減少するという意味で $\searrow$ を書き加えて増減表が完成する。

      $x$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$
      $f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
      $f(x)$$\nearrow$$4$$\searrow$$0$$\nearrow$
  5. $\blacktriangleleft$ $f(0)=0$ なので、$y=f(x)$ のグラフは原点 $(0,~0)$ を通ることに注意
    5で得られた増減表を利用して $y=f(x)$ のグラフを描くと、以下のようになる。

    6の図

導関数を利用したグラフの描画

次の各々の関数において、$y=f(x)$ のグラフを描け。

  1. $f(x)=x^3-x^2-x+2$
  2. $f(x)=-x^3+3x$
  3. $f(x)=x^3-2x^2+2x-1$
  4. $f(x)=\dfrac{1}{4}x^4-\dfrac{3}{2}x^2-2x+2$

  1. $f(x)$ を微分すると \begin{align} f'(x)=&3x^2-2x-1\\ =&(3x+1)(x-1) \end{align} これより、増減表は

    $x$$\cdots$$-\dfrac{1}{3}$$\cdots$$1$$\cdots$
    $f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
    $f(x)$$\nearrow$$f\left(-\dfrac{1}{3}\right)$$\searrow$$f(1)$$\nearrow$
    となる。ここで、$f\left(-\dfrac{1}{3}\right)$、$f(1)$ の値は \begin{align} f\left(-\dfrac{1}{3}\right)=&\left(-\dfrac{1}{3}\right)^3-\left(-\dfrac{1}{3}\right)^2\\ &\qquad-\left(-\dfrac{1}{3}\right)+2\\ =&\dfrac{59}{27} \end{align} \[f(1)=1^3-1^2-1+2=1\] である。

    1の図

    以上より、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

  2. $f(x)$ を微分すると \begin{align} f'(x)=&-3x^2+3\\ =&-3(x+1)(x-1) \end{align} これより、増減表は

    $x$$\cdots$$-1$$\cdots$$1$$\cdots$
    $f'(x)$$-$$0$$+$$0$$-$
    $f(x)$$\searrow$$f(-1)$$\nearrow$$f(1)$$\searrow$
    となる。ここで、$f(-1)$、$f(1)$ の値は \[f(-1)=-(-1)^3+3\cdot(-1)=-2\] \[f(1)=-1^3+3\cdot1=2\] である。

    2の図

    以上より、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

  3. $f(x)$ を微分すると \[f'(x)=3x^2-4x+2\] ここで、$3x^2-4x+2$ の判別式 $D/4$ は \[\dfrac{D}{4}=2^2-3\cdot2=-2\lt0\] なので、$f'(x)$ はつねに正である。

    3の図

    よって、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

  4. $f(x)$ を微分すると

    $\blacktriangleleft$ $f'(-1)=0$ なので『因数定理』(p.63) を利用して因数分解した。
    \begin{align} f'(x)=&x^3-3x-2\\ =&(x+1)^2(x-2) \end{align} これより、増減表は
    $x$$\cdots$$-1$$\cdots$$2$$\cdots$
    $f'(x)$$-$$0$$-$$0$$+$
    $f(x)$$\searrow$$f(-1)$$\searrow$$f(2)$$\nearrow$
    となる。ここで、$f(-1)$、$f(2)$ の値は \begin{align} f(-1)=&\dfrac{1}{4}\cdot(-1)^4-\dfrac{3}{2}\cdot(-1)^2\\ &\qquad-2\cdot(-1)+2\\ =&\dfrac{11}{4}\\ f(2)=&\dfrac{1}{4}\cdot2^4-\dfrac{3}{2}\cdot2^2-2\cdot2+2\\ =&-4 \end{align} である。

    4の図

    以上より、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。