軌跡
軌跡とは何か
平面上で,与えられた条件を満たしながら点Pが動くとき,点Pの描く図形を, その条件を満たす点の軌跡 (locus)という.
2点から等距離にある点の軌跡
座標平面上の2点A(−1, 4),B(3, 2)から等距離にある点Pの軌跡を求めよ.
無題

点Pの座標を(x, y)とすると,
AP=BPより,AP2=BP2だから
(x+1)2+(y−4)2=(x−3)2+(y−2)2⇔ 2x−y+1=0より,求める軌跡は,直線\boldsymbol{2x-y+1=0}である.
アポロニウスの円〜その1〜
座標平面上2点A(1,~3),B(4,-3)からの距離の比が1:2である点Pの軌跡を求めよ.
無題

AP:BP = 1:2つまり,2AP = BPだから,
4AP^2 = BP^2
P(x,~y)とすると
\text{AP}^2=(x-1)^2 +(y-3)^2 \tag{1}\label{aporoniusunoensono1nokaitou1}
←座標平面上の2点間の距離
\text{BP}^2=(x-4)^2 +(y+3)^2 \tag{2}\label{aporoniusunoensono1nokaitou2}
であるから
\begin{align} &4\left\{(x-1)^2 +(y-3)^2\right\} \\ &=(x-4)^2 +(y+3)^2\\ \Leftrightarrow~&4(x^2-2x+1) + 4(y^2 -6y+9)\\ &=x^2 -8x+16+y^2 +6y+9\\ \Leftrightarrow~&3x^2 +3y^2 -30y+40-25=0\\ \Leftrightarrow~&x^2 +y^2 -10y +5=0\\ \Leftrightarrow~&x^2 +(y-5)^2=20 \end{align}よって,求める軌跡は,
中心(0,~5)半径2\sqrt{5}の円
である.
2点からの距離の比が与えられたときの点の軌跡について,一般に次のことが成り立つ.
アポロニウスの円
2点A,Bからの距離の比がm:nである点Pの軌跡は,m\neq nのとき, 線分ABをm:nに内分する点と外分する点を直径の両端とする円である. この円をアポロニウスの円 (circle of Apollonius)という.
なお,m=nのときは,2つ上の例題でみたように,線分ABの垂直二等分線となる.
アポロニウスの円〜その2〜
上のアポロニウスの円〜その1〜の例題を,アポロニウスの円の知識を使って解け.
無題

線分ABを1:2に内分する点Mの座標は
\begin{align} &\left(\dfrac{1\times2+4\times1}{1+2},~\dfrac{3\times2-3\times1}{1+2}\right)\\ &=(2,~1) \end{align}外分する点Nの座標は
\begin{align} &\left(\dfrac{1\times2+4\times(-1)}{-1+2},~\dfrac{3\times2-3\times(-1)}{-1+2}\right)\\ &=(-2,~9) \end{align}軌跡である円の直径となるMNの距離は
\begin{align} \sqrt{(2+2)^2+(1-9)^2}=\sqrt{80}=4\sqrt{5} \end{align}軌跡である円の中心となるMNの中点の座標は
\begin{align} \left(\dfrac{2-2}{2},~\dfrac{1+9}{2}\right)=(0,~5) \end{align}よって,求める軌跡は,
中心(0,~5)半径2\sqrt{5}の円
である.
条件に動点を含む場合の軌跡
次の例題の点Qのように,条件に動点を含む場合はその座標を(X,~Y)などとおき計算していく.
条件に動点を含む場合の軌跡
円x^2+y^2=4と点A(4,~0)がある. 点Qがこの円上を動くとき,線分AQを3:1に内分する点Pの軌跡を求めよ.
無題

点P,Qの座標をそれぞれ(x,~y),(X,~Y)とする.
点Qは円x^2+y^2=4上にあるから
\begin{align} X^2+Y^2=4 \end{align} \tag{1}\label{joukennidoutenwohukumubaainokisekinokaitou1}点Pは線分AQを3:1に内分する点だから
\begin{align} X&=\dfrac{1\times4+3X}{3+1}~,\\ y&=\dfrac{1\times0+3Y}{3+1} \end{align} \tag{2}\label{joukennidoutenwohukumubaainokisekinokaitou2}よって,X=\dfrac{4}{3}x-\dfrac{4}{3},Y=\dfrac{4}{3}y.これらを\eqref{joukennidoutenwohukumubaainokisekinokaitou1}に代入すると
←なぜこのような操作を行うのかについては下の本文を参照
\begin{align} &\left(\dfrac{4}{3}x-\dfrac{4}{3}\right)^2+\left(\dfrac{4}{3}y\right)^2=4\\ \Leftrightarrow~&(x-1)^2+y^2=\dfrac{9}{4} \end{align}よって,求める軌跡は,
中心が(1,~0)半径が\dfrac{3}{2}の円
である.
上の例題の軌跡,つまり点Pの決まり方は,問題文をそのままに読めば,まず点Qが決まり次に点Pが決まるという順序になっている. しかし,このような理解では,無数の点Qに対して点Pをプロットすることしかできず,軌跡の一端は垣間見えるものの, 図形の方程式としては求まらない.
そこで,考え方の順序を変え,ある点P(x,~y)を考えてみてそれが軌跡上にあるかどうか調べるという方法をとる . たとえば,点P(1,~2)が軌跡上にあるかどうかを調べてみよう. AP:AQ = 3:1であるから,例題中の\eqref{joukennidoutenwohukumubaainokisekinokaitou2}に(1,~1)を代入して
\begin{align} 1=\dfrac{1\times4+3X}{3+1}~,~~2=\dfrac{1\times0+3Y}{3+1} \end{align}を満たさなくてはならない. この式からXとYは,(X,~Y)=\left(0,~\dfrac{8}{3}\right)であることが必要となるが, これらをそもそも円x^2 + y^2 = 4上にあるので,例題中の\eqref{joukennidoutenwohukumubaainokisekinokaitou1}を満たさなければならないが, 代入しても
\begin{align} 0+\left(\dfrac{8}{3}\right)^2\neq 4 \end{align}となり満たさないので,点(1,~2)は軌跡に含まれない(満たせば軌跡に含まれる).
このような作業を具体的な点(1,~1)ではなく,ある点(x,~y)で行うことにより,xとyが満たす方程式が 得られ軌跡を求めることができる.
このような考え方を使う例題として,もう1問練習してみよう.
2直線の交点の軌跡
2直線l_1:kx+y+1=0,l_2:x-ky-1=0の交点Pが描く軌跡を求めよ.
無題

方程式を
\begin{cases} kx+y+1=0\\ x-ky-1=0 \end{cases}上の式を\tag{1}\label{2chokusennokoutennokisekinokaitou1},下の式を\tag{2}\label{2chokusennokoutennokisekinokaitou2}としておく.
1)y\neq 0のとき,\eqref{2chokusennokoutennokisekinokaitou2}より
\begin{align} k=\dfrac{x_1}{y}~~(y\neq 0) \end{align}これを\eqref{2chokusennokoutennokisekinokaitou1}に代入して
\begin{align} &\dfrac{x_1}{y}\cdot x +y+1 =0 \\ \Leftrightarrow~&x^2 -x +y^2 +y=0\\ \Leftrightarrow~&\left(x-\dfrac{1}{2} \right)^2 +\left( y+\dfrac{1}{2}\right)^2 =\dfrac{1}{2} \end{align}2)y = 0のとき,\eqref{2chokusennokoutennokisekinokaitou2}よりx = 1が必要だが, これは,\eqref{2chokusennokoutennokisekinokaitou1}でk = − 1のとき成立する. つまり,点(1,~0)はl_1とl_2の交点である.
以上1),2)より,求める軌跡は,
中心\left(\dfrac{1}{2},~-\dfrac{1}{2}\right)半径\dfrac{1}{\sqrt{2}}の円
(ただし,点(0,~0)を除く)
となる.