多項式の除法の計算方法
多項式の除法の計算方法
ここでは, x4+3x3–4x+3をx2−3x+1で割ったときの商と余りを求める方法を 例として,具体的な計算方法を見ていく. 計算方法には次の2つの方法がある.
除法の計算方法~筆算形式~
x4+3x3−4x+3をx2−3x+1で割ったときの商と余りを求めよ.
STEP1
まず,整数の割り算と同じように,下図のように書いておく.この例題では,割られる多項式にはx2の項はないが,その場合でも 適度にスペースを空け,計算できるようにしておく.

STEP2
x2−3x+1に何をかけて引くと,x4+3x3−4x+2の最高次の項x4が消えるかを考える. この例題ではx2なので,x2を下図のように書く.

STEP3
下図のようにして,x2−3x+1にx2をかけた式をx4+3x3−4x+2から引く.

STEP4
STEP2と同じように,6x3が消えるようにx2−3x+1に6xをかけて引く.

STEP5
同じように,17x2が消えるようにx2−3x+1に17をかけて引く.

STEP6
最下段の41x–15の次数が,割る多項式x2−3x+1の次数より低いので,ここでやめる.

この結果から x4+3x3−4x+2=(x2+6x+17)(x2−3x+1)+41x−15 となることがわかり,商はx2+6x+17,余りは41x–15とわかる.
吹き出し多項式の除法の計算方法
慣れてきたらx4やx3などを省略し,係数だけを並べて筆算するとよい. 上の計算では次のようになる.

除法の計算方法~暗算形式~
x4+3x3−4x+3をx2−3x+1で割ったときの商と余りを求めよ.
STEP1
まず,右辺を展開したときにx4が現れるように,下のように書く.
x4+3x3−4x+2=(x2−3x+1)(x2 )STEP2
このままでは,右辺のx3の係数は−3となり,左辺の3と合わなくなるので,つじつまをあわせるために +6xを下のように書く.こうすれば,右辺を展開したときにx3の係数が3となり,左辺とあう.
x4+3x3−4x+2=(x2−3x+1)(x2+6x )STEP3
しかし,このままでは,右辺のx2の係数は−17となり,左辺の0と合わなくなるので,つじつまをあわせるために +17を下のように書く.こうすれば,右辺を展開したときにx2の係数が0となり,左辺とあう.
x4+3x3−4x+2=(x2−3x+1)(x2+6x+17)STEP4
しかし,このままでは,右辺のxの係数は −45となり,左辺の−4と合わなくなるので,つじつまをあわせるために+41xを右のように書く.こうすれば,右辺を展開したときにxの係数が−4となり,左辺とあう.
x4+3x3−4x+2=(x2−3x+1)(x2+6x+17)+41xSTEP5
最後に,右辺の定数項17と左辺の定数項2を合わせるため,右のように−15を書く. こうすれば,右辺を展開したときの定数項が17となり,左辺とあう.
x4+3x3−4x+2=(x2−3x+1)(x2+6x+17)+41x−15この結果から,商はx2+6x+17,余りは41x–15とわかる.
吹き出し多項式の除法の計算方法
以上2つの方法を見てきたが,慣れると『暗算形式』の方が『筆算形式』より素早く計算できる. 多項式の係数に分数が含まれる場合など,暗算での計算が難しくなる場合には『筆算形式』を使うとよい.
多項式の除法~その1~
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの,商と余りを求めよ.
- x2+2x+1,x–1
- x3+3,x+1
- x3+x2+4x+3,x2−x+1
- x4+2x3−3x2+5x+6,x2+x−1
計算すると(筆算形式は下図を参照)
x2+2x+1=(x−1)(x+3)+4となるので,商は\boldsymbol{x+3},余りは\boldsymbol{4}である.
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} x^3+3=(x+1)(x^2-x+1)+2 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2-x+1},余りは\boldsymbol{2}である.
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} &x^3+x^2+4x+3\\ =&(x^2-x+1)(x+2)+5x+1 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x+2},余りは\boldsymbol{5x+1}である.
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} & x^4+2x^3-3x^2+5x+6\\ =&(x^2+x-3)(x^2+x-1)+9x+3 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2+x-3},余りは\boldsymbol{9x+3}である.
多項式の除法~その2~
x^2 + 2x – 3で割ると,商がx + 1,余りがx + 2になる多項式を求めよ.
2x^3 − 3x^2 + 2x + 4を割ると,商が2x + 1,余りが2x + 3になる多項式を求めよ.
求める多項式をf(x)とすると,商がx + 1,余りがx + 2であるから
\begin{align} f(x) &=(x+1)(x^2+2x-3)+x+2 \\ &=x^3+3x^2-x-3+x+2\\ &=\boldsymbol{x^3+3x^2-1} \end{align}求める多項式をf(x)とおくと
\begin{align} &2x^3-3x^2+2x+4\\ &=f(x)(2x+1)+2x+3\\ \Leftrightarrow~&f(x)(2x+1)=2x^3-3x^2+1 \\ \Leftrightarrow~&f(x)(2x+1)\\ &=(2x+1)(x^2-2x+1)\\ \therefore~&f(x)=x^2-2x+1 \end{align}であるから,求める多項式は\boldsymbol{x^2-2x+1}である.
多項式の除法の一意性
ここまで計算してきた経験から,多項式の除法では,商や余りが必ず存在し,さらにそれらが一通りに定まることは明らかであろう.
一般に,ある定義で定められたものがただ一通りに定まることを一意性(uniqueness)という .次に,多項式の除法の一意性について,まとめておこう.
多項式の除法の一意性
多項式f(x),g(x)において
\begin{align} &f(x)=g(x)Q(x)+r(x)\\ &\qquad(\deg r(x) \lt \deg g(x)) \end{align}を満たす多項式Q(x),r(x)が
ただ一通りに
存在する.
【証明:背理法】
多項式f(x)とg(x)について
f(x)=g(x)Q_1(x)+r_1(x)
\deg r_1(x) \lt \deg g(x) \tag{1}\label{takousikinozyohounoitiisei1}
f(x)=g(x)Q_2(x)+r_2(x)
\deg r_2(x) \lt \deg g(x) \tag{2}\label{takousikinozyohounoitiisei2}
と2通りに表されたとする.
\eqref{takousikinozyohounoitiisei1}-\eqref{takousikinozyohounoitiisei2}より
\begin{align} &0=g(x)Q_1(x)+r_1(x)\\ &-g(x)Q_2(x)-r_2(x)\\ \Leftrightarrow~&g(x)\left\{Q_1(x)-Q_2(x)\right\}\\ &=r_2(x)-r_1(x) \end{align} \tag{3}\label{takousikinozyohounoitiisei3}となる.
\eqref{takousikinozyohounoitiisei3}において,Q_1(x) – Q_2(x)が0ではないとすると,左辺の次数が右辺の次数より大きくなってしまう. よって,Q_1(x) – Q_2(x)は0,つまりQ_1(x) = Q_2(x)である.
また,このとき③の左辺は0となるので
\begin{align} &0=r_2(x)-r_1(x)\\ \Leftrightarrow~&r_1(x)=r_2(x) \end{align}以上より,商と余りが一致することが示されたので,多項式の除法の商と余りは一通りに定まることが証明された.