正弦定理

正弦定理について

三角形の3つの頂点を通る円を、その三角形の外接円 (circumscribed circle) という。1つの三角形に対し、外接円は1つに定まる。

いま、図のような三角形とその外接円を考える。

三角形と外接円

三角形と外接円

このとき、外接円の半径を $R$ とすると \[\dfrac{a}{\sin{A}}=2R\] が成り立つ。これを、正弦定理 (sine theorem) という。この式が成り立つことを、鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形の場合に分けて以下にみていこう。

  1. $\angle{A}$ が鋭角のとき

    図のように、$\triangle\text{ABC}$ に外接する円に、直径 $\text{BD}$ を引くと、下図のようになる。

    iの図

    iの図

    いま、図の $\triangle\text{DBC}$ は直角三角形となるから $\sin{D}=\dfrac{a}{2R}$ であり、円周角の定理より $A=D$ であるから \[\sin{A}=\dfrac{a}{2R}\qquad\therefore\dfrac{a}{\sin{A}}=2R\] となり成立。

  2. $\angle{A}$ が直角のとき

    $\sin{A}=1,a=2R$ であるから

    iiの図
    \[\dfrac{a}{\sin{A}}=\dfrac{a}{1}=2R\] となり成立。

暗記正弦定理の導出

上の続きとして、$\angle{A}$ が鈍角のとき正弦定理が成り立つことを証明せよ。

鈍角三角形での正弦定理
鈍角三角形での正弦定理

$\triangle\text{ABC}$ に外接する円に、直径 $\text{BD}$ を引くと、図のようになる。

いま、図の $\triangle\text{DBC}$ は直角三角形となるから $\sin{D}=\dfrac{a}{2R}$ であり、円に内接する四角形の性質から $A=180^\circ-D$ であるから \begin{align} &\sin{(180^\circ-A)}=\sin{A}=\dfrac{a}{2R}\\ \therefore&~\dfrac{a}{\sin{A}}=2R \end{align} となり成立。

正弦定理

正弦定理

正弦定理

$\triangle\text{ABC}$ において \[\dfrac{a}{\sin{A}}=\dfrac{b}{\sin{B}}=\dfrac{c}{\sin{C}}=2R\] が成り立つ。

ただし、$R$ は $\triangle\text{ABC}$ の外接円の半径とする。

吹き出し正弦定理について

正弦定理の使い方は主に2つある。1つは、$\dfrac{a}{\sin{A}}=\dfrac{b}{\sin{B}}$ の関係から、辺の長さや角度を求めることである。この場合、正弦定理は2辺と2角について成り立つ関係式であることに注意しよう。2つの角と1つの辺がわかれば、この関係式からもう1つの辺の長さが計算できる。そしてもう1つの使い方は、外接円の半径 $R$ を求めることである。内接円ではないので注意しよう(内接円の半径については三角形の面積と内接円の半径を参照のこと)。

正弦定理の利用~その1~

$\triangle\text{ABC}$ において、$a=12$、$A=45^\circ$、$B=60^\circ$ のとき、$b$ の値を求めよ。また、$\triangle\text{ABC}$ の外接円の半径を求めよ。

正弦定理の利用
正弦定理の利用

正弦定理より、$\dfrac{a}{\sin{A}}=\dfrac{b}{\sin{B}}$ であるから \begin{align} b=&\dfrac{a\sin{B}}{\sin{A}}\\ =&\dfrac{12\sin60^\circ}{\sin45^\circ}\\ =&\dfrac{12\times\dfrac{\sqrt{3}}{2}}{\dfrac{\sqrt{2}}{2}}\\ =&\boldsymbol{6\sqrt{6}} \end{align} 同じく正弦定理より、$2R=\dfrac{a}{\sin{A}}$ であるから \begin{align} R=&\dfrac{a}{2\sin{A}}\\ =&\dfrac{12}{2\sin45^\circ}\\ =&\dfrac{12}{2\times\dfrac{\sqrt{2}}{2}}\\ =&\dfrac{12}{\sqrt{2}}\\ =&\boldsymbol{6\sqrt{2}} \end{align}

吹き出し正弦定理について

図形の角度や長さを求める問題では、図示してから考えるようにしよう。図形的感覚を磨くのに役に立ち、単純なミスを防ぐ効果もある。

正弦定理の利用~その2~

$\triangle\text{ABC}$ において、各辺の長さが $a:b:c=2:4:5$ であるとき、$\sin{A}:\sin{B}:\sin{C}$ の値を求めよ。

正弦定理の利用
正弦定理の利用

$\triangle\text{ABC}$ の外接円の半径を $R$ とすると、正弦定理より \[a=2R\sin{A},~b=2R\sin{B},~c=2R\sin{C}\] であるから \begin{align} &2R\sin{A}:2R\sin{B}:2R\sin{C}=2:4:5\\ \therefore~&\boldsymbol{\sin{A}:\sin{B}:\sin{C}=2:4:5} \end{align}