実数

無理数とは何か

さきほどの有理数の話から、数直線上にはびっしりと有理数が詰まっていることがわかった。では、今度は逆に、数直線上の点で表される値のすべてが、有理数として表せるのかについて考えてみよう。

無理数を数直線で表した図

無理数を数直線で表した図

たとえば、2辺の長さがそれぞれ $1$ である直角二等辺三角形の斜辺の長さ $x$ は、三平方の定理より \begin{align}&1^2+1^2=x^2\\{\Leftrightarrow}&x^2=2\end{align} すなわち、$x=\sqrt{2}$ で表される値であるが、これは下の図のように数直線上の点として表すこともできる。

では、この点に対応する有理数はあるのか、つまり、$\sqrt{2}$ は有理数なのだろうか。 それを次の例題で確認しよう。

暗記有理数ではないことの証明

$\sqrt{2}$ が有理数でないことを証明せよ。

(ある事柄を証明するとき、仮にその事柄が間違っているものとして話をすすめると矛盾が導かれることを示し、そのことによってもとの事柄が成り立つと結論する論法がよく用いられる。この論法のことを背理法 (reduction to absurdity) という。背理法について詳しくはFTEXT 数学Aで学ぶ。)

$\sqrt{2}$ が有理数であると仮定する。つまり \[\sqrt{2}=\dfrac{a}{b}\] と表される「既約きやく分数である」と仮定する。ただし、$a$ は整数、$b$ は $0$ でない整数である。

この両辺を2乗すると \begin{align} &2=\dfrac{a^2}{b^2}\\ \therefore&2b^2=a^2\tag{1}\label{murisuu1} \end{align} ここで、左辺は $2$ の倍数なので、右辺 $a^2$ も $2$ の倍数である。したがって、$a$ も $2$ の倍数である。

そこで、$a=2a'$ ( $a'$ は整数)とおくと、$\eqref{murisuu1}$ は \[\begin{align} &2b^2=(2a')^2\\ \Leftrightarrow~~&2b^2=4{a'}^2\\ \therefore&b^2=2{a'}^2 \end{align}\] ここで、右辺は $2$ の倍数なので、左辺 $b^2$ も $2$ の倍数となり、$b$ も $2$ の倍数となる。しかし、そうすると、$a$、$b$ がともに $2$ の倍数ということになり、最初の「既約分数である」という仮定に矛盾する。したがって、$\sqrt{2}$ は有理数ではない。

(注)

この例題からわかるように、数直線上の点として表されるような値でも、有理数ではない数が存在する。そして、その数を無理数 (irrational number) という。

循環しない無限小数

$\sqrt{2}$ は、$2$ 乗して $2$ になる正の数である。$1^2=1$、$2^2=4$ であるから $\sqrt{2}$ は $1$ と $2$ の間にある。ここで、$1.4^2=1.96\lt2$、$1.5^2=2.25\gt2$ であるから \[1.4\lt\sqrt{2}\lt1.5\] がいえる。さらに、$1.41^2=1.9881\lt2$、$1.42^2=2.0164\gt2$ であるから \[1.41\lt\sqrt{2}\lt1.42\] がいえる。同じようにして \[1.41421\lt\sqrt{2}\lt1.41422\] などがいえ、$\sqrt{2}$ にいくらでも近い有限小数を次々に求めることができる。

これを限りなく繰り返すとき、両辺に現れる無限小数 \[1.4142135623\cdots\] は $\sqrt{2}$ を表すと考えられ、この小数は循環することがない。もし、循環してしまうと $\sqrt{2}$ が有理数になってしまう。

なお、無理数の近似値を筆算によって求める方法については、『付録』を参照せよ。

実数とは何か

数直線上の点として表される数、すなわち有理数と無理数をあわせた数を実数 (real number) という。

(注)

有理数と無理数を考えることにより、数直線上の点はすきま無くみっちり埋まる。

(注)

たとえば \[-\sqrt{23},~-2\sqrt{3},~5\sqrt{2},~\sqrt{987}\] などは、どれも無理数である。また \[\begin{align} \text{円周率}~&\pi=3.1415926\cdots\\ \text{ネイピア数}~&e=2.7182818\cdots \end{align}\] も無理数であることが知られている。

今後、$a$、$b$、$x$ など、文字で数を表すとき、特にことわりが無ければ、その数は実数であるとする。

以上見てきたいろいろな数について、まとめると次のようになる。

数の分類

数の分類

数の分類

次の実数について、以下の問に答えよ。 \[\begin{align}&3,~-2,~0,~\dfrac{2}{5},~-\dfrac{2}{5},~\sqrt{3},\\&1.\dot{5}\dot{2},~\dfrac{36}{6},~-\sqrt{16},~\left(\sqrt{5}~\right)^2,~2\pi\end{align}\]

  1. 自然数を選べ。
  2. 整数を選べ。
  3. 有理数を選べ。
  4. 無理数を選べ。

  1. $\boldsymbol{3,~\dfrac{36}{6},~\left(\sqrt{5}~\right)^2}$
  2. $\boldsymbol{3,~-2,~0,~\dfrac{36}{6},~-\sqrt{16},~\left(\sqrt{5}~\right)^2}$
  3. $\begin{align}&\boldsymbol{3,~-2,~0,~\dfrac{2}{5},~-\dfrac{2}{5},}\\&\boldsymbol{1.\dot{5}\dot{2},~\dfrac{36}{6},~-\sqrt{16},~\left(\sqrt{5}~\right)^2}\end{align}$
  4. $\boldsymbol{\sqrt{3},~2\pi}$