数列とは何か

数列の定義

数列とは何か

人にプレゼントを贈るのため,今日から少しずつ貯金をしていく例を考える.今の貯金は $0$ 円だとして,毎日貯金してお金をためていく.最初は少額の $1$ 円からスタートして,1日ごとに $2$ 円ずつ金額を増やしていくことにする.つまり,次のように貯金していく.

1円初日3円2日目5円3日目7円4日目9円5日目11円6日目、$\cdots$

この

\[1,3,5,7,9,11,\cdots\]

のように,数字をならべたものを数列(sequence)という.そして,数列の中の数ひとつひとつを,その数列の項(term)という.特に,一番はじめの項のことを初項(first term)といい,2番目の項を第2項,3番目の項を第3項, $N$ 番目の項を第 $N$ 項,一番最後の項を末項(last term)という.

一般的には,数列の各項を

\[a_1,a_2,a_3,\cdots a_n,\cdots\]

のように,文字に項の番号を右下に添えて書く.また数列全体を $\{a_n\}$ と書く.

漸化式とは何か

この数列では, $n$ 日目( $n$ は自然数とする)に貯金する金額を $a_n$ で表すと

\[a_{n+1}=a_n+2\]

という関係が常に成り立つ(ここで, $a_1$ は初日の金額を表すので, $a_1=1$ である).

実際,この式の $n$ に $1$ や $2$ を代入してみると

\begin{align} a_2&=a_1+2\\ a_3&=a_2+2 \end{align}

となり, $a_1=1$ だから, $a_2=1+2=3$ として確かに2日目の貯金額が導かれる.また, $a_2=3$ だから, $a_3=3+2=5$ として3日目の貯金額が導かれる.

この $a_{n+1}=a_n+2\ (n=1,2,3,\cdots)$ のように,ある項 $(a_n)$ と別のある項 $(a_{n+1})$ との間に成り立つ関係式のことを,漸化式ぜんかしき(recurrence formula)という.

以上をまとめると,この数列は漸化式を用いて次のように表すことが出来る.

\[a_1=1,a_{n+1}=a_n+2\ (n=1,2,3,\cdots)\]

漸化式から数列の項を求める

次の条件によって定められる数列 $\{a_n\}$ の第5項までを書き出せ.

  1. $a_1=1,a_{n+1}=a_n+n^2$
  2. $a_1=2,a_{n+1}=3a_n+2$
  3. $a_1=1,a_{n+1}=5a_n+2^n$
  4. $a_1=1,a_{n+1}=5a_n+n$
  5. $a_1=2,a_2=5,a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$
  6. $a_1=2,a_{n+1}=\dfrac{2a_n+2}{a_n+3}$

  1. \begin{align} a_1&=1\\ a_2&=1+2^2=5\\ a_3&=5+3^2=14\\ a_4&=14+4^2=30\\ a_5&=30+5^2=55 \end{align}

    より, $\boldsymbol{1,5,14,30,55}$ である.

  2. \begin{align} a_1&=2\\ a_2&=3\cdot2+2=8\\ a_3&=3\cdot8+2=26\\ a_4&=3\cdot26+2=80\\ a_5&=3\cdot80+2=242 \end{align}

    より, $\boldsymbol{2,8,26,80,242}$ である.

  3. \begin{align} a_1&=1\\ a_2&=5\cdot1+2=7\\ a_3&=5\cdot7+2^2=39\\ a_4&=5\cdot39+2^3=203\\ a_5&=5\cdot203+2^4=1031 \end{align}

    より, $\boldsymbol{1,7,39,203,1031}$ である.

  4. \begin{align} a_1&=1\\ a_2&=5\cdot1+1=6\\ a_3&=5\cdot6+2=32\\ a_4&=5\cdot32+3=163\\ a_5&=5\cdot163+4=819 \end{align}

    より, $\boldsymbol{1,6,32,163,819}$ である.

  5. \begin{align} a_1&=2\\ a_2&=5\\ a_3&=5\cdot5-6\cdot2=13\\ a_4&=5\cdot13-6\cdot5=35\\ a_5&=5\cdot35-6\cdot13=97 \end{align}

    より, $\boldsymbol{2,5,13,35,97}$ である.

  6. \begin{align} a_1&=2\\ a_2&=\frac{2\cdot2+2}{2+3}=\frac{6}{5}\\ a_3&=\frac{2\cdot\frac{6}{5}+2}{\frac{6}{5}+3}=\frac{22}{21}\\ a_4&=\frac{2\cdot\frac{22}{21}+2}{\frac{22}{21}+3}=\frac{86}{85}\\ a_5&=\frac{2\cdot\frac{86}{85}+2}{\frac{86}{85}+3}=\frac{342}{341} \end{align}

    より, $\boldsymbol{2,\dfrac{6}{5},\dfrac{22}{21},\dfrac{86}{85},\dfrac{342}{341}}$ である.

数列の一般項

数列の一般項

さきほどの例では,10日目にはいったい何円貯金しなければならないだろうか?

実際に数列を書き並べて

\begin{align} &\boxed1\ \boxed2\ \ \boxed3\ \boxed4\ \ \boxed5\ \boxed6\ \ \boxed7\ \boxed8\ \ \boxed9\ \boxed{10}\\ &\ 1\ ,\ 3\ ,\ 5\ ,\ 7\ , \ 9\ ,11,13,15,17,19 \end{align}

とすれば,19円貯金しなければならないことがわかるが,これでは20日目や50日目の貯金額を知りたいときにかなり面倒である.

そこで,別の見方を考えてみよう.

たとえば,「日にち」と「貯金額」との対応を見たときに, $\boxed{1}\times2−1=1円$ , $\boxed{2}\times2−1=3円$ , $\boxed{3}\times2−1=5円,\cdots$ だから

\[(日にち)\times2−1=(貯金額)\]

であることに気がつけば,10日目に貯金しなければならない金額 $a_{10}$ は

\[a_{10}=10\times2−1=19円\]

と求めることができる.この方法を使えば,20日目の貯金額 $a_{20}$ は $a_{20}=20\times21=39円$ , 50日目の貯金額 $a_{50}$ は $a_{50}=50\times2−1=99円$ と簡単に求めることができる.

さらに, $n$ 日目の貯金額 $a_n$ は

\[a_n=n\times2−1=2n−1円\]

と表すことができる.

このように,数列の第 $n$ 項( $n$ 日目の貯金額)が $n$ ( $n$ 日目)の式で表されているとき,その第 $n$ 項を一般項(general term)という.一般項が求まれば, $n$ に自然数を順次代入することによって,数列の各項を求めることができる.

数列の一般項

数列 $\{a_n\}$ の一般項が,次の式で与えられているとき,初項から第5項までを書き出せ.

  1. $a_n=2n$
  2. $a_n=2^n$
  3. $a_n=\dfrac{2n+1}{n}$
  4. $a_n=\dfrac{2^n}{n+1}$

  1. \begin{align} a_1&=2\cdot1=2\\ a_2&=2\cdot2=4\\ a_3&=2\cdot3=6\\ a_4&=2\cdot4=8\\ a_5&=2\cdot5=10 \end{align}

    より, $\boldsymbol{2,4,6,8,10}$ である.

  2. \begin{align} a_1&=2^1=2\\ a_2&=2^2=4\\ a_3&=2^3=8\\ a_4&=2^4=16\\ a_5&=2^5=32 \end{align}

    より, $\boldsymbol{2,4,8,16,32}$ である.

  3. \begin{align} a_1&=\frac{2+1}{1}=3\\ a_2&=\frac{4+1}{2}=\frac{5}{2}\\ a_3&=\frac{6+1}{3}=\frac{7}{3}\\ a_4&=\frac{8+1}{4}=\frac{9}{4}\\ a_5&=\frac{10+1}{5}=\frac{11}{5} \end{align}

    より, $\boldsymbol{3,\dfrac{5}{2},\dfrac{7}{3},\dfrac{9}{4},\dfrac{11}{5}}$ である.

  4. \begin{align} a_1&=\frac{2^1}{1+1}=1\\ a_2&=\frac{2^2}{2+1}=\frac{4}{3}\\ a_3&=\frac{2^3}{3+1}=2\\ a_4&=\frac{2^4}{4+1}=\frac{16}{5}\\ a_5&=\frac{2^5}{5+1}=\frac{16}{3} \end{align}

    より, $\boldsymbol{3,\dfrac{4}{3},2,\dfrac{16}{5},\dfrac{16}{3}}$ である.

数列の和

数列の和

(無題)

10日に貯金しなければいけない金額はわかった.次に,10日間で貯金できた合計金額を考えてみよう.

初日に1円,2日目に3円,3日目に5円, $\cdots$ ,10日目に19円貯金するのだから,金額を順に足していくことにより

\begin{align} &1+3+5+7+9+11+13\\ &\qquad+15+17+19=100 [円] \end{align}

となり,ちょうど100円貯金できたことがわかる.

しかし,この考え方では,20日間や50日間で貯金した合計金額を知りたいときに相当面倒である.そこで,別の見方を考えてみよう.

上記のように両端から順にペアを組ませると,ペア同士の和が全て同じ数値「 $20$ 」になることに気がつけば

\[S_{10}=20\times\frac{10}{2}=100 [円]\]

と求めることができる.(ペアの個数は,元の項数10の半分となる.)

この方法を使えば, $S_{20},S_{50}$ も次のように求めることができる.

\begin{align} S_{20}&=1+3+5+\cdots+35+37+39\\ &=40\times\frac{20}{2}=400 [円]\\ S_{50}&=1+3+5+\cdots+95+97+99\\ &=100\times\frac{50}{2}=2500 [円] \end{align}

さらに, $n$ 日間で貯金できた合計金額 $S_n$ は

\begin{align} S_n&=1+3+\cdots+(2n−3)+(2n−1)\\ &=2n\times\frac{n}{2}=n^2 [円] \end{align}

と表すことができる.

ここで,貯金が1万円になるまでの日数を考えると, $S_n=10000$ という方程式を考えて

\begin{align} S_n&=10000\\ \Leftrightarrow\ n^2&=10000\\ n&=100 \end{align}

より100日間とわかる.つまり,最初1円からスタートしても3ヶ月弱で達成できる.意外と早いものだ.