対数関数

これまでは対数の計算を中心に見てきたが、ここでは対数関数としての振る舞いについて学ぶ。後半では対数を含む方程式や不等式の解き方についてみていく。

対数関数のグラフ

点$(a,~b)$と点$(b,~a)$の関係

無題
無題

点$(a,b)$と点$(b,a)$の関係

座標平面上のある点$\text{A}(a,~b)~(a\neq b)$に対して,この点の$x$ 座標の値$a$ と$y$ 座標の値$b$ を交換した点$\text{B}(b,~a)$をつくる.

このとき,2点$\text{A},\text{B}$の中点の座標は$\left(\dfrac{a+b}{2},~\dfrac{a+b}{2}\right)$なので,直線$y = x$上にあることがわかる. また,2点$\text{A},\text{B}$を結ぶ直線は,傾きが$\dfrac{a-b}{b-a}=-1$なので,直線$y = x$と直交するのがわかる. 以上のことから,2点$\text{A},\text{B}$は,右図のように,直線$y = x $に関して対称となる.

このことを踏まえて,以下に述べる対数関数についてみていこう.

対数関数とは何か

対数関数とは何か

対数関数の定義

$a>0,~a\neq1$のとき,正の実数$x $に対して

\begin{align} y=\log_a{x} \end{align}

で表される関数を,$a$を底てい(base)とする$x$の対数関数(logarithmic function)という.

(注)

この対数関数$y = \log_zx$のグラフがどのような形になるのかを調べるため,以下のように考えていく.

STEP1

まず,対数の定義より

\begin{align} y=a^x\Longleftrightarrow{x=\log_a{y}} \end{align}

であるから,指数関数$y = a^x$のグラフと,$x = \log_ay$のグラフは等しい.

STEP2

この$x = \log_ay$ を満たす点$(x,y)$の$x$ 座標と$y $座標を入れ換えたものが,対数関数$y = \log_ax$ を満たすものとなるから

$y = ax$と$y = \log_ax$ は,直線$y = x$ に関して対称なグラフ

となる.

これをもとに対数関数$y = \log_ax$のグラフについてまとめると次のようになる

指数関数と対数関数のグラフ

無題
無題

指数関数$y = a^x$と対数関数$y = \log_ax$のグラフは,次のような関係になる.

対数関数の性質

対数関数の性質について

対数関数の性質について

対数関数のグラフで学んできたことをまとめると,次のようになる. 対数関数$y = \log_ax$のグラフを見ながら1つ1つ確認しよう.

対数関数の性質

無題
無題

指数関数の性質について,次のようにまとめることができる.

  1. 定義域は

    正の

    実数全体,値域は実数全体である.

  2. グラフは定点$(1,~0)$を通り,$y$ 軸が漸近線となる.

  3. 単調な関数であるから,$x$の値と$y$の値は1対1に定まる,すなわち

    \begin{align} \log_a{x_1}=\log_a{x_2}\Longleftrightarrow{}x_1=x_2 \end{align}
  4. 関数の増加と減少について

    1. $a > 1$のとき,単調増加関数である,すなわち

      \[x_1 \lt x_2\Longleftrightarrow{}\log_a{x_1} \lt \log_a{x_2}\]
    2. $0 < a < 1$のとき,単調減少関数である,すなわち

      \[x_1 \lt x_2\Longleftrightarrow{}\log_a{x_1} \gt \log_a{x_2}\]

吹き出し対数関数の性質について

$0 < a < 1$のときは,$x_1$と$x_2$の大小関係と,$\log_ax_1$と$\log_ax_2$の大小関係は逆になることに注意しよう. たとえば,$\log_23 < \log_24$だが,$\log_0.53 > \log_0.54$である.

対数の大小関係

次の値を小さいものから順に並べよ.

  1. $\dfrac{1}{2}\log_2\dfrac{1}{3},~-1,~\log_23^{-1}$
  2. $\dfrac{1}{2},~\dfrac{1}{2}\log_35,~-\log_3\dfrac{1}{2}$

    対数の大小関係の図その1

    対数関数の性質より

  1. 左から順に $\blacktriangleleft$まず底をそろえて大小を比較できるようにする

    \begin{align} &\dfrac{1}{2}\log_2\dfrac{1}{3}=\log_2\left(\dfrac{1}{3}\right)^\dfrac{1}{2}=\log_2\dfrac{1}{\sqrt{3}}\\ &-1=\log_2{2^{-1}}=\log_2\dfrac{1}{2} \end{align}

    $\log_23^{-1}=\log_2\dfrac{1}{3}$ $\blacktriangleleft$すべて底を$2$でそろえた

    $y = \log_2x$は増加関数で,$\dfrac{1}{3}<\dfrac{1}{2}<\dfrac{1}{\sqrt{3}}$だから

    \begin{align} &\log_2\dfrac{1}{3}<\log_2\dfrac{1}{2}<\log_2\dfrac{1}{\sqrt{3}}\\ \therefore~&\boldsymbol{\log_23^{-1}<-1<\dfrac{1}{2}\log_2\dfrac{1}{3}} \end{align}
  2. 対数の大小関係の図その2

    対数関数の性質より

  3. 左から順に $\blacktriangleleft$まず底をそろえて大小を比較できるように

    \begin{align} &\dfrac{1}{2}=\log_3\left(3\right)^\dfrac{1}{2}=\log_3\sqrt{3}\\ &\dfrac{1}{2}\log_35=\log_35^\dfrac{1}{2}=\log_3\sqrt{5}\end{align}

    $-\log_3\dfrac{1}{2}=\log_3\left(\dfrac{1}{2}\right)^{-1}=\log_32$ $\blacktriangleleft$すべて底を$3$でそろえた

    $y = \log_3x$は増加関数で,$\sqrt{3}<2<\sqrt{5}$だから

    \begin{align} &\log_3\sqrt{3}<\log_32<\log_3\sqrt{5}\\ \therefore~&\boldsymbol{\dfrac{1}{2}<-\log_3\dfrac{1}{2}<\dfrac{1}{2}\log_35} \end{align}

対数を含む1次方程式・1次不等式-その1-

次の方程式,または不等式を解け.

  1. $\log_2x=2$
  2. $\log_3x<1 $
  3. $\log_{\frac{1}{3}}x>1$
  4. $\log_{\frac{1}{2}}(x+1)>3$

  1. 真数は正であるから$x > 0$が必要.

    以下,この条件のもと $\blacktriangleleft$まず真数条件をチェックする

    \begin{align} &\log_2x=2\\ \Leftrightarrow~&\log_2x=\log_22^2\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=4} \end{align} $\blacktriangleleft$ $2 = \log_22^2$して底をそろえた

    $\blacktriangle$対数関数の性質

  2. 真数は正であるから

    \[x\gt0\tag{1}\label{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono11}\]

    が必要.以下,この条件のもと $\blacktriangleleft$まず真数条件をチェックする

    \begin{align} &\log_3x\lt1\\ \Leftrightarrow~&\log_3x\lt\log_33\\ &\quad\blacktriangleleft 1=\log_33として\\ &\qquad底をそろえた\\ \Leftrightarrow~&x\lt3\tag{2}\label{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono12}\\ &\quad\blacktriangleleft \boldsymbol{対数関数の性質} \end{align}

    $\eqref{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono11}$,$\eqref{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono12}$を両方満たす$x$ を求めて,$\boldsymbol{0\lt x\lt 3}$となる.

  3. 真数は正であるから

    \[x\gt0\tag{3}\label{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono13}\]

    が必要.以下,この条件のもと $\blacktriangleleft$まず真数条件をチェックする

    \begin{align} &\log_{\frac{1}{3}}x\gt1\\ \Leftrightarrow~&\log_{\frac{1}{3}}x\gt\log_{\frac{1}{3}}\dfrac{1}{3}\\ &\quad\blacktriangleleft 1=\log_{\frac{1}{3}}{\dfrac{1}{3}}として\\ &\qquad底をそろえた\\ \Leftrightarrow~&x\lt\dfrac{1}{3}\tag{4}\label{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono14}\\ &\quad\blacktriangleleft \boldsymbol{対数関数の性質} \end{align}

    $\eqref{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono13}$,$\eqref{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono14}$を両方満たす$x$ を求めて,$\boldsymbol{0\lt x\lt\dfrac{1}{3}}$となる.

  4. 真数は正であるから$x + 1 > 0$つまり

    \[x\gt-1\tag{5}\label{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono15}\]

    が必要. 以下,この条件のもと $\blacktriangleleft$まず真数条件をチェックする

    \begin{align} &\log_{\frac{1}{2}}(x+1)\gt3\\ \Leftrightarrow~&\log_{\frac{1}{2}}(x+1)\\ &\qquad\gt\log_{\frac{1}{2}}\left(\dfrac{1}{2}\right)^3\\ &\quad\blacktriangleleft 3=\log_{\frac{1}{2}}\left(\dfrac{1}{2}\right)^3\\ &\qquadとして底をそろえた\\ \Leftrightarrow~&x+1\lt\dfrac{1}{8}\\ &\quad\blacktriangleleft \boldsymbol{対数関数の性質}\\ \Leftrightarrow~&x\lt-\dfrac{7}{8}\tag{6}\label{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono16} \end{align}

    $\eqref{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono15}$,$\eqref{taisuuwohukumu1zihouteishiki1zihutoushikisono16}$を両方満たす$x$を求めて,$\boldsymbol{-1\lt x\lt-\dfrac{7}{8}}$となる.

吹き出し対数関数の性質について

(真数)$ > 0$という条件(真数条件という)は,忘れやすいので気をつけよう.