高次方程式

前セクションでは、因数定理(factor theorem)を利用した因数分解を学んだ。これを利用すれば、3次以上の次数をもつ方程式(高次方程式)を解くこともできる。以下ではその方法を詳しく見ていこう。

因数定理と高次方程式

高次方程式とは何か

$n$次方程式

多項式$P(x)$が$n$次式であるとき,$P(x) = 0$の形に表される方程式を$ n$次方程式(equation of n-th degree)という.

たとえば,$x^3 − 2x^2 + 5x + 8 = 0$は3次方程式,$2x^4-8x^3+\dfrac{7}{3}x^2-2=0$は4次方程式である. 特に,3次以上の方程式を高次方程式(equation of higher degree)という.

簡単な高次方程式

高次方程式$P(x) = 0$を解くことは,一般的には難しいが,因数分解できるときには簡単に解くことができる. たとえば,方程式$x^3 = 1$では

\begin{align} &x^3=1\\ \Leftrightarrow~&x^3-1=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x^2+x+1)=0\\ &←a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)\\ \Leftrightarrow~&x-1=0~,~~x^2+x+1=0\\ \Leftrightarrow~&x=1~,~~\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{align}

と解を求めることができる.

簡単な高次方程式

次の方程式を複素数の範囲で解け.

  1. $x^3=27$
  2. $x^3=-8$


  1. \begin{align} &x^3=27\\ \Leftrightarrow~&x^3-27=0\\ \Leftrightarrow~&(x-3)(x^2+3x+9)=0\\ \Leftrightarrow~&x-3=0,~x^2-3x+9=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=3,~\dfrac{3\pm3\sqrt{3}i}{2}} \end{align}

  2. \begin{align} &x^3=-8\\ \Leftrightarrow~&x^3+8=0\\ \Leftrightarrow~&(x+2)(x^2-2x+4)=0\\ \Leftrightarrow~&x+2=0,~x^2-2x+4=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-2,~1\pm\sqrt{3}i} \end{align}

3乗して$a$ になる数を$a$ の3乗根といい,方程式$x^3 = a$ の解として求めることができる. さきほどの例から,1の3乗根は$1,~\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$である.

暗記1の3乗根$\omega$

1の3乗根のうち,虚数であるものの1つを$\omega$とするとき,次のことを証明せよ.

  1. $\omega^3 = 1$
  2. $\omega^2 + \omega + 1 = 0$
  3. 別のもう1つの虚数解は$\overline{\omega}$であり$\omega^2$と一致する.

  1. $\omega$は$x^3 = 1$の解であるので明らか.

  2. $x^3 = 1$を解くと

    \begin{align} &x^3=1\\ \Leftrightarrow~&x^3-1=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x^2+x+1)=0\\ \Leftrightarrow~&x-1=0~,~~x^2+x+1=0\\ \Leftrightarrow~&x=1~,~~\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{align}

    このうち,$\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$または$\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}$が$\omega$であるが,これらはどちらも,方程式$x^2 + x + 1 = 0$の解であるので,$\omega^2 + \omega + 1 = 0$である.

  3. $\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}と\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}$は共役の関係にあり

    \begin{align} &\left(\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^2\\ &=\dfrac{1-2\sqrt{3}i-3}{4}\\ &=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\\ &\left(\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^2\\ &=\dfrac{1+2\sqrt{3}i-3}{4}\\ &=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2} \end{align}

    より,$\overline{\omega}=\omega^2$が成り立つ.

2次方程式に帰着できる高次方程式

次の方程式を複素数の範囲で解け.

  1. $x^4-13x^2+9=0$
  2. $x^4-2x^2-3=0$
  3. $x^4+x^2-20=0$
  4. $(x^2+2x)^2+4(x^2+2x)+3=0$


  1. \begin{align} &x^4-13x^2+9=0\\ \Leftrightarrow~&x^2=\dfrac{13\pm\sqrt{133}}{2}\\ \Leftrightarrow~&x=\pm\sqrt{\dfrac{13\pm\sqrt{133}}{2}} \end{align}

  2. \begin{align} &x^4-2x^2-3=0\\ \Leftrightarrow~&(x^2+1)(x^2-3)=0\\ \Leftrightarrow~&x^2+1=0,~x^2-3=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=\pm{i},~\pm\sqrt{3}} \end{align}

  3. \begin{align} &x^4+x^2-20=0\\ \Leftrightarrow~&(x^2+5)(x^2-4)=0\\ \Leftrightarrow~&x^2+5=0,~x^2-4=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=\pm\sqrt{5}{i},~\pm 2} \end{align}

  4. \begin{align} &(x^2+2x)^2+4(x^2+2x)+3=0\\ \Leftrightarrow~&(x^2+2x+1)(x^2+2x+3)=0\\ \Leftrightarrow~&x^2+2x+1=0,~x^2+2x+3=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-1,~-1\pm\sqrt{2}i} \end{align}

因数定理を利用した高次方程式の解法

すぐに因数分解が思いつかなくても,因数定理を利用して因数を探し当て, 因数分解を行うことができた.因数分解ができれば,高次方程式を解くこともできる.

高次方程式

次の方程式を解け.

  1. $x^3+3x^2-4=0$
  2. $2x^3-7x^2+9=0 $
  3. $x^4-6x^3+7x^2+6x-8=0$
  4. $x^4-8x^3-2x^2+72x-63=0$

  1. $f(x) = x^3 + 3x^2 − 4$とおく.

    \begin{align} f(1)=1+3-4=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.       $\blacktriangleleft$先に$f ( − 2) = 0$を見つけてもよい

    よって,$f(x) = 0$は

    \begin{align} &(x-1)(x^2+4x+4)=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x+2)^2=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=1,~-2} \end{align}  $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その1
  2. $f(x) = 2x^3 − 7x^2 + 9$とおく.

    \begin{align} f(-1)=-2-7+9=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x + 1$を因数にもつのがわかる.$\blacktriangleleft$先に$f (3) = 0$や$f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0$を見つけてもよい

    よって,$f(x) = 0$は

    \begin{align} &(x+1)(2x^2-9x+9)=0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(2x-3)(x-3)=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-1,~\dfrac{2}{3},~3} \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その2
  3. $f(x) = x^4 − 8x^3 + 7x^2 + 6x – 8$とおく.

    \begin{align} f(1)=1-6+7+6-8=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.  $\blacktriangleleft$先に$f ( − 1) = 0$や$f (2) = 0$などを見つけてもよい

    よって

    \begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その3

    さらに,$g(x) = x^3 − 5x^2 + 2x + 8$とおくと

    \begin{align} g(-1)=-1-5-2+8=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$g(x)$は$x + 1$を因数にもつのがわかる. $\blacktriangleleft$先に$g(2) = 0$や$g(4) = 0$などを見つけてもよい

    よって

    \begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その4

    より,$f(x) = (x + 1)(x − 1)(x − 2)(x − 4)$である.

    以上より,$f (x) = 0$の解は,$\boldsymbol{x=-1,~1,~2,~4}$となる.

  4. $f (x) = x^4 − 8x^3 − 2x^2 + 72x − 63$とおく.

    \begin{align} f(1)=1-8-2+72-63=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f (x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.$\blacktriangleleft$先に$f(3) = 0$や$f ( − 3) = 0$などを見つけてもよい

    よって

    \begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63) \end{align}   $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その5

    さらに,$g(x) = x^3 − 7x^2 − 9x + 63$とおくと

    \begin{align} g(3)=27-63-27+63=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$g(x)$は$x – 3$を因数にもつのがわかる$\blacktriangleleft$先に$g( − 3) = 0$や$g(7) = 0$などを見つけてもよい.

    よって

    \begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その6

    より,$f(x) = (x − 1)(x − 3)(x + 3)(x − 7)$である.

    以上より,$f (x) = 0$の解は,$x=1,~3,~-3,~7$となる.

上の例題の(1)のように,方程式$(x − 1)(x + 2)^2 = 0$の解$x = − 2$を,この方程式の2重解(double solution)という. また,たとえば方程式$(x − 1)(x + 2)^3 = 0$の解$x = − 2$を,この方程式の3重解(triple solution)という.

複素数の範囲では,方程式の2重解を重なった2個の解,3重解を重なった3個の解などと数えることにすると, 2次方程式では2個の解,3次方程式は3個の解,4次方程式では4個の解をもつ. 一般の場合では,次のことが知られている.

代数学の基本定理

$n$次方程式では,複素数の範囲で,$n$個の解をもつ.

方程式の重解条件

3次方程式$3x^3 − (3 + a)x^2 + a = 0$が重解をもつとき,定数$a$ の値とそのときの解をすべて求めよ. ただし,$a $は実数である.

$3x^3 − (3 + a)x^2 + a$
$= (x − 1)(3x^2 − ax − a)$であるので,$f (x) = 3x^2 − ax – a$とおくと,

3次方程式が重解をもつためには,$f (x) = 0$が$x = 1$に解をもつか,$f (x) = 0$が重解をもてばよい.

1)$f (x) = 0$が$x = 1$に解をもつとき

$f (1) = 0$より

\begin{align} 3-a-a=0\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=\dfrac{3}{2}} \end{align}

このとき,$f(x)=3x^2-\dfrac{3}{2}x-\dfrac{3}{2}$であるから,3次方程式の解は

\begin{align} &(x-1)\left(3x^2-\dfrac{3}{2}x-\dfrac{3}{2}\right)=0\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{3}{2}(x-1)^2(2x+1)=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=1,~-\dfrac{1}{2}} \end{align}

2)$f (x) = 0$が重解をもつとき

判別式を考えて

\begin{align} D=a^2+12a=0\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=0,~-12} \end{align}

となる.

$a = 0$のとき

\begin{align} &f(x)=0\\ \Leftrightarrow~&3x^2=0\Leftrightarrow~x=0 \end{align}

であるので,3次方程式の解は$\boldsymbol{x=1,~x=0}$である.

$a = − 12$のとき

\begin{align} &f(x)=0\\ \Leftrightarrow~&3x^2+12x+12=0\\ \Leftrightarrow~&3(x+2)^2=0\\ \Leftrightarrow~&x=-2 \end{align}

であるので,3次方程式の解は$\boldsymbol{x=1,~x=-2}$である.

高次不等式

高次不等式とは何か

$n$次不等式

多項式$P (x)$が$n$次式であるとき,$P(x)\geqq0$や$P(x)<0$などで表される不等式を $n$次不等式(inequality of n-th degree)という.

たとえば,$x^3-2x^2+5x+8\geqq0$は3次不等式,$2x^4-8x^3+\dfrac{7}{3}x^2-2<0$は4次不等式である. 特に,3次以上の不等式を高次不等式(inequality of higher degree)という.

なお,方程式の場合とは違い,不等式の場合には数の大小関係を扱うので,複素数については考えない,つまり$x $は実数の範囲でのみ考える.

簡単な高次不等式

高次不等式を解くことは一般的には難しいが,高次方程式と同様,因数分解できるときには解くことができる. たとえば,方程式$x^3\geqq1$では

\begin{align} &x^3\geqq1\\ \Leftrightarrow~&x^3-1\geqq0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x^2+x+1)\geqq0&\qquad \end{align}

←$a^3 – b^3 = (a − b)(a^2 + ab + b^2)$を使った

いま,$x^2+x+1=\left(x+\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{3}{4}>0$なので,

\begin{align} (x-1)&\underbrace{(x^2+x+1)}_{}\geqq0となるのは,x-1\geqq0,\\ & \ \ \ \ \ 常に正 \end{align}

つまり$x\geqq1$と解くことができる.

簡単な高次不等式

次の不等式を解け.

  1. $x^3\geqq27$
  2. $x^3<-8$
  3. $x^3-9x<0$
  4. $x^3-x^2\geqq0$


  1. \begin{align} &x^3\geqq27\\ \Leftrightarrow~&x^3-27\geqq0\\ \Leftrightarrow~&(x-3)(x^2+3x+9)\geqq0 \end{align} $\blacktriangleleft a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)$を使った

    いま,$x^2+3x+9=\left(x+\dfrac{3}{2}\right)^2+\dfrac{27}{4}>0$なので, $(x-3)(x^2+3x+9)\geqq0$となるのは,$x-3\geqq0$,つまり$\boldsymbol{x\geqq3}$である.


  2. \begin{align} &x^3<-8\\ \Leftrightarrow~&x^3+8<0\\ \Leftrightarrow~&(x+2)(x^2-2x+4)<0 \end{align} $\blacktriangleleft a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)$を使った

    いま,$x^2-2x+4=\left(x-1\right)^2+3>0$なので,$ (x + 2)(x2 − 2x + 4) < 0$となるのは,$x + 2 < 0$,つまり$\boldsymbol{x<-2}$である.


  3. \begin{align} &x^3-9x<0\\ \Leftrightarrow~&x(x^2-9)<0\\ \Leftrightarrow~&(x+3)x(x-3)<0 \end{align}

    いま,$(x + 3)x(x − 3)$の符号は$x$ の値に応じて,以下のようにまとめることができる.

    $x$$\cdots$$-3$$\cdots$$0$$\cdots$$3$$\cdots$
    $x+3$$-$$0$$+$$+$$+$$+$$+$
    $x$$-$$-$$-$$0$$+$$+$$+$
    $x-3$$-$$-$$-$$-$$-$$0$$+$
    $(x+3)x(x-3)$$-$$0$$+$$0$$-$$3$$+$

    これより,$(x + 3)x(x − 3) < 0$を満たすのは,$\boldsymbol{x\lt -3~,~~0\lt x\lt 3}$である.

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】   $\blacktriangleleft$この解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    簡単な高次不程式の解答の図その1

    $f(x) = x3 − 9x < 0$とおくと

    \begin{align} f(x)&=x(x^2-9)=(x+3)x(x-3) \end{align}

    より$y = f (x)$のグラフは図となるので,$f (x) < 0$を満たすのは,$\boldsymbol{x \lt -3~,~~0 \lt x \lt 3}$である.


  4. \begin{align} &x^3-x^2\geqq0\\ \Leftrightarrow~&x^2(x-1)\geqq0 \end{align}

    いま,$x^2(x − 1)$の符号は$x$ の値に応じて,以下のようにまとめることができる.

    $x$$\cdots$$0$$\cdots$$1$$\cdots$
    $x^2$$-$$0$$+$$+$$+$
    $x-1$$-$$-$$-$$0$$+$
    $x^2(x-3)$$+$$0$$-$$0$$+$

    これより,$x^2(x-1)\geqq0$を満たすのは,$\boldsymbol{x=0~,~~1\leqq x}$である.

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】   $\blacktriangleleft$この解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    $f(x) = x^3 – x^2 < 0$とおくと

    \begin{align} f(x)&=x^2(x-1) \end{align}

    より$y = f (x)$のグラフは図となるので,$f(x)\geqq0$を満たすのは,$\boldsymbol{x=0~,~~1\leqq x}$である.

    簡単な高次不程式の解答の図その2

因数定理を利用した高次不等式の解法

(注)

高次方程式の場合と同様に, 因数定理を利用して因数分解できれば,高次不等式を解くことができる.

高次不等式

次の不等式を解け.

  1. $x^3+3x^2-4>0$
  2. $2x^3-7x^2+9\leqq0 $
  3. $x^4-6x^3+7x^2+6x-8<0$
  4. $x^4-8x^3-2x^2+72x-63\geqq0$

  1. $f(x)=x^3+3x^2-4$ とおく。 \[f(1)=1+3-4=0\]

    $\blacktriangleleft$ 先に $f(-2)=0$ を見つけてもよい
    であるから、因数定理より $f(x)$ は $x-1$ を因数にもつのがわかる。
    組立除法をつかうなら
    1の組立除法の図
    よって、$f(x)\gt0$ は \begin{align} &(x-1)(x^2+4x+4)\gt0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x+2)^2\gt0 \end{align} いま、$(x-1)(x+2)^2$ の符号は $x$ の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    $x$$\cdots$$-2$$\cdots$$1$$\cdots$
    $x-1$$-$$-$$-$$0$$+$
    $(x+2)^2$$+$$0$$+$$+$$+$
    $(x-1)(x+2)^2$$-$$0$$-$$0$$+$

    これより、$(x-1)x^2\gt0$ を満たすのは、$\boldsymbol{1\lt{x}}$ である。

    $\blacktriangleleft$ この解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】

    1のグラフ

    $f(x)=x^3+3x^2-4$ とおくと \[f(x)=(x-1)(x+2)^2\] より $y=f(x)$ のグラフは図となるので、$f(x)\gt0$ を満たすのは、$\boldsymbol{1\lt{x}}$ である。

  2. $f(x)=2x^3-7x^2+9$ とおく。 \[f(-1)=-2-7+9=0\]

    $\blacktriangleleft$ 先に $f(3)=0$ や $f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0$ を見つけてもよい
    であるから、因数定理より $f(x)$ は $x+1$ を因数にもつのがわかる。
    組立除法をつかうなら
    2の組立除法の図
    よって、$f(x)\leqq0$ は \begin{align} &(x+1)(2x^2-9x+9)\leqq0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(2x-3)(x-3)\leqq0 \end{align} いま、$(x+1)(2x-3)(x-3)$ の符号は$x$ の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    $x$$\cdots$$-1$$\cdots$$\dfrac{3}{2}$$\cdots$$3$$\cdots$
    $x+1$$-$$0$$+$$+$$+$$+$$+$
    $2x-3$$-$$-$$-$$0$$+$$+$$+$
    $x-3$$-$$-$$-$$-$$-$$0$$+$
    $f(x)$$-$$0$$+$$0$$-$$0$$+$

    これより、$(x+1)(2x-3)(x-3)\leqq0$ を満たすのは、$\boldsymbol{x\leqq-1,~\dfrac{3}{2}\leqq{x}\leqq3}$ である。

    $\blacktriangleleft$ この解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】

    2のグラフ

    $f(x)=2x^3-7x^2+9$ とおくと \[f(x)=(x+1)(2x-3)(x-3)\] より $y=f(x)$ のグラフは図となるので、$f(x)\leqq0$ を満たすのは、$\boldsymbol{x\leqq-1,~\dfrac{3}{2}\leqq{x}\leqq3}$ である。

  3. $f(x)=x^4-6x^3+7x^2+6x-8$ とおく。 \[f(1)=1-6+7+6-8=0\]

    $\blacktriangleleft$ 先に $f(-1)=0$ や $f(2)=0$ などを見つけてもよい
    であるから、因数定理より $f(x)$ は $x-1$ を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    3の組立除法の図

    よって \begin{align} &f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} さらに、$g(x)=x^3-5x^2+2x+8$ とおくと \[g(-1)=-1-5-2+8=0\]

    $\blacktriangleleft$ 先に $g(2)=0$ や $g(4)=0$ などを見つけてもよい
    であるから、因数定理より $g(x)$ は $x+1$ を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    3の組立除法の図

    よって \begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} である。以上から、$f(x)\lt0$ は \begin{align} &(x-1)(x^3-5x^2+2x+8)<0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)<0 \end{align} いま、$(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)$ の符号は $x$ の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    $x$$\cdots$$-1$$\cdots$$1$$\cdots$$2$$\cdots$$4$$\cdots$
    $x+1$$-$$0$$+$$+$$+$$+$$+$$+$$+$
    $x-1$$-$$-$$-$$0$$+$$+$$+$$+$$+$
    $x-2$$-$$-$$-$$-$$-$$0$$+$$+$$+$
    $x-4$$-$$-$$-$$-$$-$$-$$-$$0$$+$
    $f(x)$$+$$0$$-$$0$$+$$0$$-$$0$$+$

    これより、$(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)\lt0$ を満たすのは、$\boldsymbol{-1\lt{x}\lt1,~2\lt{x}\lt4}$ である。

    3のグラフ

    【別解:4次関数のグラフを使う方法】

    $f(x)=x^4-6x^3+7x^2+6x-8$ とおくと \[f(x)=(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)\] より $y=f(x)$ のグラフは図となるので、$f(x)\lt0$ を満たすのは、$\boldsymbol{-1\lt{x}\lt1,~2\lt{x}\lt4}$ である。

  4. $f(x)=x^4-8x^3-2x^2+72x-63$ とおく。 \[f(1)=1-8-2+72-63=0\]

    $\blacktriangleleft$ 先に $f(3)=0$ や $f(-3)=0$ などを見つけてもよい
    であるから、因数定理より $f(x)$ は $x-1$ を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    4の組立除法の図

    よって \[f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63)\] さらに、$g(x)=x^3-7x^2-9x+63$ とおくと \[g(3)=27-63-27+63=0\]

    $\blacktriangleleft$ 先に $g(-3)=0$ や $g(7)=0$ などを見つけてもよい。
    であるから、因数定理より $g(x)$ は $x-3$ を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    4の組立除法の図

    よって、 \begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} である。以上から $f(x)\geqq0$ は \begin{align} &(x-1)(x^3-7x^2-9x+63)\geqq 0\\ \Leftrightarrow~&(x+3)(x-1)(x-3)(x-7)\geqq0 \end{align} いま、$(x+3)(x-1)(x-3)(x-7)$ の符号は $x$ の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    $x$$\cdots$$-3$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$$7$$\cdots$
    $x+3$$-$$0$$+$$+$$+$$+$$+$$+$$+$
    $x-1$$-$$-$$-$$0$$+$$+$$+$$+$$+$
    $x-3$$-$$-$$-$$-$$-$$0$$+$$+$$+$
    $x-7$$-$$-$$-$$-$$-$$-$$-$$0$$+$
    $f(x)$$+$$0$$-$$0$$+$$0$$-$$0$$+$

    これより、$(x+3)(x-1)(x-3)(x-7)\geqq0$ を満たすのは、$\boldsymbol{x\leqq-3,~1\leqq{x}\leqq3,~7\leqq{x}}$ である。

    4のグラフ

    【別解:4次関数のグラフを使う方法】

    $f(x)=x^4-8x^3-2x^2+72x-63$ とおくと \[f(x)=(x+3)(x-1)(x-3)(x-7)\] より $y=f(x)$ のグラフは図となるので、$f(x)\geqq0$ を満たすのは、$\boldsymbol{x\leqq-3,~1\leqq{x}\leqq3,~7\leqq{x}}$ である。

解と係数の関係

2次方程式の解と係数の関係

解と係数の関係

$f(x) = x^2 + ax + b$とし,2次方程式$f(x) = 0$を考える. $f(x) = 0$の2解を$\alpha,\beta$とすると,$f(\alpha) = 0,f(\beta) = 0$なので,$ f (x)$は$x − \alpha$および$x − \beta$を因数にもつのがわかるので

\begin{align} \left(f(x)=\right)x^2+ax+b=(x-\alpha)(x-\beta) \end{align} とおける.

$(x − \alpha)(x − \beta)$を展開すると$x^2 − (\alpha + \beta)x + \alpha\beta$であり

\begin{align} x^2+ax+b=x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta \end{align}

これらは多項式として等しいので,両辺の係数を比較して

\begin{align} &\begin{cases} a=-(\alpha+\beta)\\ b=\alpha\beta \end{cases} \Leftrightarrow~ \begin{cases} \alpha+\beta=-a\\ \alpha\beta=b \end{cases} \end{align}

が成り立つ.

2次方程式の解と係数の関係

2次方程式$x^2 + ax + b = 0$の2解を$\alpha,\beta$とすると

\begin{align} \begin{cases} \alpha+\beta=-a\\ \alpha\beta=b \end{cases} \end{align}

が成り立つ.

吹き出し2次方程式の解と係数の関係

$x^2$の係数が$1$でないときでも,その値で方程式全体を割ることにより,$ x^2$の係数が$1$である方程式に変え考えることができる.

\begin{align} ax^2+bx+c=0~\Leftrightarrow~x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{c}{a}=0 \end{align}

これより,$ax^2 + bx + c = 0$の2解を$\alpha,\beta$とすると

\begin{align} \begin{cases} \alpha+\beta=-\dfrac{b}{a}\\ \alpha\beta=\dfrac{c}{a} \end{cases} \end{align}

とわかる.

2次方程式の解と係数の関係

次の2次方程式の2解を$\alpha,\beta$とする.$\alpha + \beta$および$\alpha\beta$の値を求めよ.

  1. $x^2-5x+7=0$
  2. $3x^2+8x-6=0$

  1. 2次方程式の解と係数の関係から

    \begin{align} &\alpha+\beta=\boldsymbol{5}\\ &\alpha\beta=\boldsymbol{7} \end{align}
  2. 式全体を$3$で割り,$x^2+\dfrac{8}{3}x-2=0$.2次方程式の解と係数の関係から

    \begin{align} &\alpha+\beta=\boldsymbol{-\dfrac{8}{3}}\\ &\alpha\beta=\boldsymbol{-2} \end{align}

2次方程式の解と係数の関係の利用

2次方程式$2x^2 − 6x + 7 = 0$の2解を$\alpha,\beta$とするとき,次の式の値を求めよ.

  1. $\alpha^2+\beta^2$
  2. $(\alpha-2)(\beta-2)$
  3. $\dfrac{1}{\alpha^2}+\dfrac{1}{\beta^2}$
  4. $\alpha^3+\beta^3$
  5. $\alpha^4+\beta^4$
  6. $\alpha^5+\beta^5$

2次方程式の解と係数の関係より

\begin{align} \alpha+\beta=3~,~~\alpha\beta=\dfrac{7}{2} \end{align}

$\tag{1}\label{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$

である.

  1. \begin{align} &\alpha^2+\beta^2\\ &=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta\end{align} $\blacktriangleleft$対称式は基本対称式の組合せであらわすことができる対称式の定理 \begin{align} =3^2-2\cdot\dfrac{7}{2}\\ =9-7=\boldsymbol{2} \end{align} $\blacktriangleleft\eqref{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$を使った
  2. \begin{align} &(\alpha-2)(\beta-2) \\ &=\alpha\beta-2(\alpha+\beta)+4 \end{align} $\blacktriangleleft$対称式は基本対称式の組合せであらわすことができる対称式の定理 \begin{align} &=\dfrac{7}{2}-2\cdot 3+4\\ &=\boldsymbol{\dfrac{3}{2}} \end{align} $\blacktriangleleft\eqref{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$を使った

    【別解】 $2x^2 − 6x + 7 = 2(x − \alpha)(x − \beta)$の両辺に$x = 2$を代入すると

    \begin{align} &3=2(2-\alpha)(2-\beta)\\ \Leftrightarrow~&(\alpha-2)(\beta-2)=\boldsymbol{\dfrac{3}{2}} \end{align}
  3. \begin{align} &\dfrac{1}{\alpha^2}+\dfrac{1}{\beta^2}\\ &=\dfrac{\alpha^2+\beta^2}{\alpha^2\beta^2}\end{align}   $\blacktriangleleft$対称式は基本対称式の組合せであらわすことができる対称式の定理 \begin{align}&=\dfrac{2}{\left(\dfrac{7}{2}\right)^2}\\ &=\boldsymbol{\dfrac{8}{49}} \end{align} $\blacktriangleleft$1.と$\eqref{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$を使った
  4. \begin{align} &\alpha^3+\beta^3\\ &=(\alpha+\beta)(\alpha^2-\alpha\beta+\beta^2) \end{align} $\blacktriangleleft$対称式は基本対称式の組合せであらわすことができる対称式の定理 \begin{align} &=3\left(2-\dfrac{7}{2}\right) \\ &=\boldsymbol{-\dfrac{9}{2}} \end{align} $\blacktriangleleft$1.と$\eqref{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$を使った
  5. \begin{align} &\alpha^4+\beta^4\\ &=(\alpha^2+\beta^2)^2-2\alpha^2\beta^2 \end{align} $\blacktriangleleft$対称式は基本対称式の組合せであらわすことができる対称式の定理 \begin{align} &=2^2-2\left(\dfrac{7}{2}\right)^2\\ &=\boldsymbol{-\dfrac{41}{2}} \end{align} $\blacktriangleleft$1.と$\eqref{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$を使った
  6. \begin{align} &\alpha^5+\beta^5\\ &=(\alpha^3+\beta^3)(\alpha^2+\beta^2)-\alpha^2\beta^2(\alpha+\beta) \end{align} $\blacktriangleleft$対称式は基本対称式の組合せであらわすことができる対称式の定理 \begin{align} &=\left(-\dfrac{9}{2}\right)\cdot 2-\left(\dfrac{7}{2}\right)^2\cdot 3 \\ &=\boldsymbol{-\dfrac{183}{4}} \end{align} $\blacktriangleleft$1.,4.と$\eqref{2zihouteisikinokaitokeisuunokannkei}$を使った

2次方程式の解と係数の関係の逆

$\alpha,\beta$に関する連立方程式

\begin{align} \begin{cases} \alpha+\beta=-a&\qquad\cdots(\mathrm{i})\\ \alpha\beta=b&\qquad\cdots(\mathrm{i}\mathrm{i}) \end{cases} \end{align}

の解は,2次方程式$x^2 + ax + b = 0$の2解であることを証明せよ.

$(\mathrm{i})$より

\begin{align} \beta=-a-\alpha\qquad\cdots(\mathrm{i}\mathrm{i}\mathrm{i}) \end{align}

これを$(\mathrm{i}\mathrm{i})$に代入して

\begin{align} &\alpha(-a-\alpha)=b\\ \Leftrightarrow~&\alpha^2+a\alpha+b=0\qquad\cdots(\mathrm{i}\mathrm{v}) \end{align}

これより,$\alpha$は2次方程式$x^2 + ax + b = 0$の解であることがわかる.

また,このとき$x^2 + ax + b$の$x $に$\beta$を代入すると

\begin{align} &\beta^2+a\beta+b\\ &=(-a-\alpha)^2+a(-a-\alpha)+b\\ &=\alpha^2+a\alpha+b\\ &=0 \end{align} $\blacktriangleleft (\mathrm{i}\mathrm{i}\mathrm{i})$より

$\blacktriangle (\mathrm{i}\mathrm{v})$より

となり,$\beta$も2次方程式$x^2 + ax + b = 0$の解であることがわかる.

2次方程式の解と係数の関係の逆

$\alpha,\beta$に関する連立方程式

\begin{align} \begin{cases} \alpha+\beta=-a\\ \alpha\beta=b \end{cases} \end{align}

の解は,2次方程式$x^2 + ax + b = 0$の2解である.

2次方程式の解と係数の関係の逆の利用

次の連立方程式を解け.


  1. \begin{cases} x+y=3\\ xy=-10 \end{cases}

  2. \begin{cases} x+y=-\dfrac{5}{2}\\ xy=-\dfrac{3}{2} \end{cases}

  3. \begin{cases} x+y=-2\\ x^2+y^2=20 \end{cases}

  4. \begin{cases} xy=1\\ x^2+y^2=1 \end{cases}

  1. 和が$3$,積が $− 10$となる2数は,2次方程式$t^2 − 3t − 10 = 0$の解である.

    \begin{align} &t^2-3t-10=0\\ \Leftrightarrow~&(t-5)(t+2)=0\\ \Leftrightarrow~&t=-2,~5 \end{align}

    より,$\boldsymbol{(x,~y)=(-2,~5),~(5,~-2)}$.

  2. 和が$-\dfrac{5}{2}$,積が$-\dfrac{3}{2}$となる2数は,2次方程式$t^2+\dfrac{5}{2}t-\dfrac{3}{2}=0$の解である.

    \begin{align} &t^2+\dfrac{5}{2}t-\dfrac{3}{2}=0\\ \Leftrightarrow~&\left(t-\dfrac{1}{2}\right)(t+3)=0\\ \Leftrightarrow~&t=\dfrac{1}{2},~-3 \end{align}

    より,$\boldsymbol{(x,~y)=\left(\dfrac{1}{2},~-3\right),~\left(-3,~\dfrac{1}{2}\right)}$.

  3. 連立方程式を変形していくと

    \begin{align} &\begin{cases} x+y=-2\\ x^2+y^2=20 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~ &\begin{cases} x+y=-2\\ (x+y)^2-2xy=20 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~ &\begin{cases} x+y=-2\\ (-2)^2-2xy=20 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~ &\begin{cases} x+y=-2\\ xy=-8 \end{cases} \end{align}

    和が $− 2$,積が $− 8$となる2数は,2次方程式$t^2 + 2t − 8 = 0$の解である.

    \begin{align} &t^2+2t-8=0\\ \Leftrightarrow~&(t+4)(t-2)=0\\ \Leftrightarrow~&t=-4,~2 \end{align}

    より,$\boldsymbol{(x,~y)=(-4,~2),~(2,~-4)}$.

  4. 連立方程式を変形していくと

    \begin{align} &\begin{cases} xy=1\\ x^2+y^2=1 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~ &\begin{cases} xy=1\\ (x+y)^2-2xy=1 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~ &\begin{cases} xy=1\\ (x+y)^2-2\cdot 1=1 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~ &\begin{cases} xy=1\\ x+y=\pm\sqrt{3} \end{cases} \end{align}

    和が$\pm\sqrt{3}$,積が$1$となる2数は,2次方程式$t^2\mp\sqrt{3}t+1=0$の解である.

    \begin{align} &t^2-\sqrt{3}t+1=0\\ \Leftrightarrow~&t=\dfrac{\sqrt{3}\pm i}{2} \end{align}

    また

    \begin{align} &t^2+\sqrt{3}t+1=0\\ \Leftrightarrow~&t=\dfrac{-\sqrt{3}\pm i}{2} \end{align}

    より

    \begin{align} &\boldsymbol{(x,~y)=}\\ &\boldsymbol{\left(\dfrac{\sqrt{3}+i}{2},~\dfrac{\sqrt{3}-i}{2}\right)},\\ &\boldsymbol{\left(\dfrac{\sqrt{3}-i}{2},~\dfrac{\sqrt{3}+i}{2}\right)},~\\ &\boldsymbol{\left(\dfrac{-\sqrt{3}+i}{2},~\dfrac{-\sqrt{3}-i}{2}\right)},\\ &~\boldsymbol{\left(\dfrac{-\sqrt{3}-i}{2},~\dfrac{-\sqrt{3}+i}{2}\right)} \end{align}

3次方程式の解と係数の関係

$f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$とし,3次方程式$f(x) = 0$を考える. $f(x) = 0$の3解を$\alpha,\beta,\gamma$とすると,$f(\alpha) = 0,f(\beta) = 0,f(\gamma) = 0$なので,$ f (x)$は$x − \alpha,x − \beta$および$x − \gamma$を因数にもつのがわかるので

\begin{align} &\left(f(x)=\right)x^3+ax^2+bx+c\\ &\qquad=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma) \end{align}

とおける.

$(x − \alpha)(x − \beta)(x − \gamma)$を展開すると$x^3 − (\alpha + \beta + \gamma)x + (\alpha\beta + \beta\gamma + \gamma\alpha)x − \alpha\beta\gamma$であり

\begin{align} &x^3+ax^2+bx+c\\ =&x^3-(\alpha+\beta+\gamma)x\\ +&(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)x-\alpha\beta\gamma \end{align}

これらは多項式として等しいので,両辺の係数を比較して

\begin{align} &\begin{cases} a=-(\alpha+\beta+\gamma)\\ b=\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha\\ c=-\alpha\beta\gamma \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~& \begin{cases} \alpha+\beta+\gamma=-a\\ \alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=b\\ \alpha\beta\gamma=-c \end{cases} \end{align}

が成り立つ.

3次方程式の解と係数の関係

3次方程式$x^3 + ax^2 + bx + c = 0$の3解を$\alpha,\beta,\gamma$とすると

\begin{align} \begin{cases} \alpha+\beta+\gamma=-a\\ \alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=b\\ \alpha\beta\gamma=-c \end{cases} \end{align}

が成り立つ.

吹き出し3次方程式の解と係数の関係

2次方程式の場合と同様に,$x^3$の係数が1でないときでも,その値で方程式全体を割ることにより, $x^3$の係数が1である方程式に変え考えることができる.

\begin{align} &ax^3+bx^2+cx+d=0\\ ~\Leftrightarrow~&x^3+\dfrac{b}{a}x^2+\dfrac{c}{a}x+\dfrac{d}{a}=0 \end{align}

これより,$ax^3 + bx^2 + cx + d = 0$の3解を$\alpha,\beta,\gamma$とすると

\begin{align} \begin{cases} \alpha+\beta+\gamma=-\dfrac{b}{a}\\ \alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=\dfrac{c}{a}\\ \alpha\beta\gamma=-\dfrac{d}{a} \end{cases} \end{align}

とわかる.

2次方程式と3次方程式に限らず,解と係数の関係は一般の$n$次方程式まで成立する.

3次方程式の解と係数の関係

次の3次方程式の3解を$\alpha,\beta,\gamma$とする.$ \alpha + \beta + \gamma,\alpha\beta + \beta\gamma + \gamma\alpha$および$\alpha\beta\gamma$の値を求めよ.

  1. $x^3-5x^2+7x-1=0$
  2. $3x^3+8x^2-6x+5=0$

  1. 3次方程式の解と係数の関係から

    \begin{align} &\alpha+\beta+\gamma=\boldsymbol{5}\\ &\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=\boldsymbol{7}\\ &\alpha\beta\gamma=\boldsymbol{1} \end{align}
  2. 式全体を$3$で割り,$x^3+\dfrac{8}{3}x^2-2x+\dfrac{5}{3}=0$.3次方程式の解と係数の関係から

    \begin{align} &\alpha+\beta+\gamma=\boldsymbol{-\dfrac{8}{3}}\\ &\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=\boldsymbol{-2}\\ &\alpha\beta\gamma=\boldsymbol{-\dfrac{5}{3}} \end{align}

3次方程式の解と係数の関係の利用

3次方程式$x^3 − 3x + 5 = 0$の3解を$\alpha,\beta,\gamma$とするとき,次の式の値を求めよ.

  1. $\alpha^2+\beta^2+\gamma^2$
  2. $ (\alpha+1)(\beta+1)(\gamma+1) $
  3. $\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}+\dfrac{1}{\gamma}$
  4. $\alpha^3+\beta^3+\gamma^3$

3次方程式の解と係数の関係より

\begin{align} &\alpha+\beta+\gamma=0,\\ &\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=-3,\\ &\alpha\beta\gamma=-5 \end{align} $\tag{1}\label{3zihouteisikinokaitokeisuunokankeinoriyou}$

である.

  1. \begin{align} &\alpha^2+\beta^2+\gamma^2\\ &=(\alpha+\beta+\gamma)^2-2(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)\\ &=0^2-2\cdot(-3)\\ &=\boldsymbol{6} \end{align}     $\blacktriangleleft\eqref{3zihouteisikinokaitokeisuunokankeinoriyou}$を使った
  2. \begin{align} &(\alpha+1)(\beta+1)(\gamma+1)\\ &=\alpha\beta\gamma+\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha+\alpha+\beta+\gamma+1\\ &=-5-3+0+1\\ &=\boldsymbol{-7} \end{align}     $\blacktriangleleft\eqref{3zihouteisikinokaitokeisuunokankeinoriyou}$を使った

    【別解】

    $x^3 − 3x + 5 = (x − \alpha)(x − \beta)(x − \gamma)$の両辺に$x = − 1$を代入すると

    \begin{align} &7=(-1-\alpha)(-1-\beta)(-1-\gamma)\\ \Leftrightarrow~&(\alpha+1)(\beta+1)(\gamma+1)=\boldsymbol{-7} \end{align}
  3. \begin{align} &\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}+\dfrac{1}{\gamma}\\ &=\dfrac{\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha}{\alpha\beta\gamma}\\ &=\dfrac{-3}{-5}\\ &=\boldsymbol{\dfrac{3}{5}} \end{align}     $\blacktriangleleft\eqref{3zihouteisikinokaitokeisuunokankeinoriyou}$を使った
  4. \begin{align} &\alpha^3+\beta^3+\gamma^3\\ =&(\alpha+\beta+\gamma)\left\{\alpha^2+\beta^2+\gamma^2\right. \\ &\Bigl. -(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)\Bigr\}+3\alpha\beta\gamma\\ =&0\cdot\left\{6-(-3)\right\}+3\cdot(-5)\\ =&\boldsymbol{-15} \end{align} $\blacktriangleleft$1.と$\eqref{3zihouteisikinokaitokeisuunokankeinoriyou}$を使った

実数が係数である方程式の共役解

2次方程式の場合

2次方程式$x^2 + 2x + 3 = 0$は

\begin{align} &x^2+2x+3=0\\ \Leftrightarrow~&x=-1\pm\sqrt{11}i \end{align}

と解け,共役な複素数である$-1+\sqrt{11}i$と$-1-\sqrt{11}i$を解にもつのがわかる.

$a_2,a_1,a_0$を実数とするとき,これらを係数とする2次方程式

\begin{align} a_2x^2+a_1x+a_0=0 \end{align}

\begin{align} x=\dfrac{-a_1\pm\sqrt{{a_1}^2-4a_2a_0}}{2a_2} \end{align}

と解けるので,判別式${a_1}^2-4a_2a_0$の値が負であるとき,共役な複素数である

\begin{align} \dfrac{-a_1+\sqrt{4a_2a_0-{a_1}^2}i}{2a_2}\end{align}と\begin{align}\dfrac{-a_1-\sqrt{4a_2a_0-{a_1}^2}i}{2a_2} \end{align}

を解にもつことがわかる.

判別式の値が負のとき,2次方程式が共役な複素数を解にもつことは, ,次のような方法で示すこともできる.

$a_2,a_1,a_0$を実数とするとき,これらを係数とする2次方程式

\begin{align} a_2x^2+a_1x+a_0=0 \end{align} $\tag{1}\label{2zihouteisikinobaai1}$

が$x = \alpha$という複素数解をもつとすると, $\eqref{2zihouteisikinobaai1}$に$\alpha$を代入して

\begin{align} &a_2\alpha^2+a_1\alpha+a_0=0 \end{align} $\tag{2}\label{2zihouteisikinobaai2}$

が成り立つ.

いま,$\eqref{2zihouteisikinobaai1}$ の左辺に$x=\overline{\alpha}$を代入してみると

\begin{align} &a_2\overline{\alpha}^2+a_1\overline{\alpha}+a_0 \end{align} \begin{align} &=a_2\overline{\alpha^2}+a_1\overline{\alpha}+a_0 \end{align} ←共役な複素数の性質 \begin{align} &=\overline{a_2}\ \overline{\alpha^2}+\overline{a_1}\ \overline{\alpha}+\overline{a_0} \end{align} ←複素数の実数条件と純虚数条件 \begin{align} &=\overline{a_2\alpha^2}+\overline{a_1\alpha}+\overline{a_0} \end{align} ←共役な複素数の性質 \begin{align} &=\overline{a_2\alpha^2+a_1\alpha+a_0} \end{align} ←共役な複素数の性質 \begin{align} &=0 \end{align} ←$\eqref{2zihouteisikinobaai2}$より

となるので,$\eqref{2zihouteisikinobaai1}$は共役な複素数解$x=\overline{\alpha}$をもつ.

3次方程式の場合

暗記実数係数の3次方程式の共役複素数解

$a_3,a_2,a_1,a_0$を実数とするとき,これらを係数とする3次方程式

\begin{align} a_3x^3+a_2x^2+a_1x+a_0=0 \end{align} $\tag{1}\label{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukai}$

が$x = \alpha$という複素数解をもつとき,共役な複素数$x=\overline{\alpha}$も解にもつことを証明せよ.

$\eqref{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukai}$が$x = \alpha$という複素数解をもつとすると,

$\eqref{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukai}$に$\alpha$を代入して

\begin{align} &a_3\alpha^3+a_2\alpha^2+a_1\alpha+a_0=0 \end{align} $\tag{2}\label{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukainokaitou}$

が成り立つ.

いま,$\eqref{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukai}$の左辺に$x=\overline{\alpha}$を代入してみると

$a_3\overline{\alpha}^3+a_2\overline{\alpha}^2+a_1\overline{\alpha}+a_0$

$=a_3\overline{\alpha^3}+a_2\overline{\alpha^2}+a_1\overline{\alpha}+a_0 \blacktriangleleft$共役な複素数の性質

$=\overline{a_3}\ \overline{\alpha^3}+\overline{a_2}\ \overline{\alpha^2}+\overline{a_1}\ \overline{\alpha}+\overline{a_0} \blacktriangleleft$複素数の実数条件と純虚数条件

$=\overline{a_3\alpha^3}+\overline{a_2\alpha^2}+\overline{a_1\alpha}+\overline{a_0} \blacktriangleleft$共役な複素数の性質

$=\overline{a_3\alpha^3+a_2\alpha^2+a_1\alpha+a_0} \blacktriangleleft$共役な複素数の性質

$=0 \blacktriangleleft\eqref{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukainokaitou}$ より

となるので,$\eqref{zissuukeisuuno3zihouteiesikinokyouyakuhukusuukai}$は共役な複素数解$x=\overline{\alpha}$をもつのがわかる.

一般に次のことがいえる.

実数係数の$n$次方程式の共役複素数解

係数がすべて実数である$n$次方程式$P(x) = 0$が,$x = \alpha$という複素数の解をもつ,すなわち

\begin{align} P(\alpha)=0 \end{align}

であるとき,$P(x) = 0$は共役な複素数$x=\overline{\alpha}$を解にもつ,すなわち

\begin{align} P(\overline{\alpha})=0 \end{align}

である.

吹き出し3次方程式の場合

以上は係数が実数の場合でしか成り立たない. たとえば,$x^2-2ix+5=0$,のように,虚数を係数にもつ方程式ではこのようなことはいえないので注意しよう.

実数係数の$n$次方程式の共役複素数解

実数係数の3次方程式

\begin{align} x^3+ax^2+bx+6=0 \end{align} $\tag{1}\label{zissuukeisuunonzihouteisikikyouyakuhukusosuukai}$

が$x=1+\sqrt{2}i$を解にもつとき,実数$a,b$の値と他の解を求めよ.

$\eqref{zissuukeisuunonzihouteisikikyouyakuhukusosuukai}$が$x=1+\sqrt{2}i$を解にもつとき,それと共役な

複素数$1-\sqrt{2}i$も解にもつ.     $\blacktriangleleft$実数係数の$n$次方程式の共役複素数解を使った

よって,$\eqref{zissuukeisuunonzihouteisikikyouyakuhukusosuukai}$は

\begin{align} &\left\{x-(1+\sqrt{2}i)\right\}\left\{x+(1-\sqrt{2}i)\right\}\\ =&x^2-2x+3 \end{align}

で割り切れるから

\begin{align} x^3+ax^2+bx+6=(x^2-2x+3)(x+c) \end{align}

とおける.右辺を展開すると

\begin{align} (x^2-2x+3)(x+c)=&x^3+(-2+p)x^2\\ &+(3-2p)x+3p \end{align}

となるので,係数を比較すると

\begin{align} \begin{cases} a=-2+p\\ b=3-2p\\ 6=3p \end{cases}\Leftrightarrow~ \begin{cases} p=2\\ \boldsymbol{a=0}\\ \boldsymbol{b=-1} \end{cases} \end{align}

他の解は,$\boldsymbol{x=1-\sqrt{2}i,~-2}$.

【別解:『3次方程式の解と係数の関係』を使う】

$\eqref{zissuukeisuunonzihouteisikikyouyakuhukusosuukai}$が$x=1+\sqrt{2}i$を解にもつとき,それと共役な 複素数$1-\sqrt{2}i$も解にもつ. $\blacktriangleleft$実数係数の$n$次方程式の共役複素数解を使った

$\alpha=1+\sqrt{2}i,\beta=1-\sqrt{2}i$とおき,残りひとつの解を$\gamma$とすると3次方程式の解と係数の関係より

\begin{align} &\begin{cases} \alpha+\beta+\gamma=-a\\ \alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=b\\ \alpha\beta\gamma=-6 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~&\begin{cases} \left(1+\sqrt{2}i\right)+\left(1-\sqrt{2}i\right)+\gamma=-a\\ \left(1+\sqrt{2}i\right)\left(1-\sqrt{2}i\right)\\ +\left\{\left(1+\sqrt{2}i\right)+\left(1-\sqrt{2}i\right)\right\}\gamma=b\\ \left(1+\sqrt{2}i\right)\left(1-\sqrt{2}i\right)\gamma=-6 \end{cases}\\ \Leftrightarrow~&\begin{cases} 2+\gamma=-a\\ 3+2\gamma=b\\ 3\gamma=-6 \end{cases} \end{align}

これを解くと,$\gamma=-2\,,\boldsymbol{a=0},\boldsymbol{b=-1}$となる.

他の解は,$\boldsymbol{x=1-\sqrt{2}i,~-2}$.