FTEXTの理念
一昔前までは、積分記号(∫)や数列の和を表す記号(Σ)など、複雑な数式を含む教材を作るには、手書きや切り貼りしか方法がありませんでした。 最近は、数式の打てるワープロソフトや、フリーの組版ソフト「TeX」などの登場により、工夫しだいでは一般の書籍にも劣らない綺麗な教材を作ることができるようになりました。
手計算では大変面倒である複雑な関数や方程式のグラフの描画は、パソコンで瞬時に表すことができ、また、陰影のついた3次元の画像なども少々手間はかかるものの、プロのデザイナーに勝るとも劣らない表現ができるようになりました。さらに最近では、動画(アニメーション)を利用した教材も作成されているようです。こうしたパソコンの利用による表現形式の変化は、何も教材作成に限ったことではなく、例えば、画像描画支援ソフトを用いたデジタルアート作成、音楽作成支援ソフトを用いた作曲といった趣味の領域から、プレゼンテーション支援ソフトを用いた新企画の提案・論文の発表といったビジネス・研究の領域まで、幅広く見られます。
以上のような表現手法の変化は、単に便利になったということを超えて、創作活動の現場での人間の思考方法の変化をももたらしています。単なるテキストエディタ1つにしても、紙と万年筆の時代の「考えて書く」から、「書きながら考える」という新しい文章作成作法を確立しました。
何らかの活動の場において、伝統的な創作手法に代わり、パソコンの利用を前提とした創作手法が人間の思考方法に与える影響は、ニュースにこそなりませんが、時代の大きな変わり目として注目に値するでしょう。
ところが、このような影響でさえも、これから述べるネットワーク時代への単なる準備に過ぎないものでした。
現在、私達の所有するパソコンの上には、コンピュータを便利に使うためのソフトウェアが数多く動いています。その中でも特に注目したいのが、フリーのソフトウェアの存在です。フリーといえども、ファイルの圧縮解凍ソフトからワープロソフト、画像編集ソフト、ソフトウェア開発環境、果てはOSまで、ラインナップはかなりのものです。もちろん商品であるソフトウェアにかなわない点もあるのですが、これらのフリーソフトを組み合せて利用すれば、実際問題としてパソコンでできる仕事の大部分は間に合ってしまうでしょう。
これらのフリーソフトは、勝手に沸いて出たのもでは決してありません。そこには、いきずまりから生じた「あんなものがあったらいいのに」という皆の思いと、「こんなものを作ってみたので使ってみて」という能力ある人の気前の良さがあります。そこには、大げさにいえば、困難を明確にして解決していこうという、人間の営みがあります。これは、一朝一夕でできることではなく、一つの文化であると言っても過言ではないでしょう。
こうしたフリーソフトの普及には、もちろんネットワークが大きな役割を果たしているのですが、忘れてならないのが、フリーソフトが作られるまでの人と人とのコミュニケーションもまたネットワークによるものだということです。いや、むしろ、ネットワークによるコミュニケーションこそが、このような文化を可能にしたのでしょう。
孤立奮闘するのではなく、問題点を共有すること、ここに私達は新しい可能性を見出します。
一人の力では到底作りきれないようなソフトウェアも、ネットワーク上のコミュニティーで、各自の能力に応じて、開発しているという現象も最近では珍しいものではなくなりました。有名なところではフリーのOS、Linuxなどもそのように開発されてきたものです。
私達は、このような知的共同作業は決して、パソコン上で動くソフトウェアに限ったものではないと考えました。
テキストがデジタルデータ化し、ネットワークが知的共同作業を可能にした今、私達がやりたいこと、それは、「FTEXT」に代表される、皆の知を結集した「おもちゃ」をつくりあげること。
この未曾有の実験にご期待下さい。
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