数学I 第1章 数と式 — いろいろな数

「数とは何か?」この質問に答えるのは難しい。私たちは普段から数を使い、(試験以外では)何不自由無く暮らしている。では、昔から人々が「数」をやすやすと利用してきたかというと、そうではない。「数」は有史以来、発見されつづけ、作られつづけたものなのである。この節では、中学までに学んださまざまな「数」を、数直線の上に並べながら整理していく。するとやがて、分数の目盛りをどれだけ細かく刻んでも、数直線が埋まりきらないことに気づくだろう。数が「作られつづけた」その現場に、実際に立ち会ってみよう。

自然数

自然数とは何か

ものの数を数えるとき、表現の仕方はいろいろだが、私たちは順序をつけて考えている。たとえば、リンゴが 個、 個、 個、 個、・・・と増えていく様子を思いうかべてみよう。

リンゴが左から1個、2個、3個、4個と、まとまりごとに1個ずつ増えながら横一列に並んでいる。右端には、さらに続くことを表す記号「…」が描かれている。

これを各言語では次のように表す。

日本語ならば 一、二、三、四、・・・
英語ならば one、two、three、four、・・・
韓国語ならば 하나、둘、셋、넷、・・・
タイ語ならば หนึ่ง、สอง、สาม、สี่、・・・
スワヒリ語ならば moja、mbili、tatu、nne、・・・
フランス語ならば un、deux、trois、quatre、・・・
アラビア語ならば ١、٢、٣、٤、・・・

順序をつけてものの数を数えるということは、たとえば、リンゴ 個と鉛筆 本は全く異なるものなのに、同じ「」という言葉でひとくくりにする、ということである。これは、ものに備わった「数」という点以外のあらゆる個性を捨て去ることに他ならない。

愛着ある飼い猫のように、その個性が重要な場合には、数を数えることに意味は無い。 しかし、 匹の羊を放牧するときのように、ある程度心理的距離のあるものを管理する場合には、数を数えることには大きな意味がある。数を数えておかないと、夕刻、羊を小屋にしまうとき、迷子の羊がいてもわからなくなってしまう。

ものの数を数える行為によって生まれる数、、、、 を自然数 (natural number)という。

§

定義1自然数

から始めて、 を足すことを次々と繰り返して得られる数を、自然数という。

たとえば、次の数は全て自然数である。 私たちがすでに使っている や などは、「数」ではあるが自然数ではない。

自然数の図示

自然数の様子を図で見えるようにするため、以下のようなことを考えよう。

まず、向きのある直線(下図では右向き)上に原点 をとり、適当な長さをもった線分を、原点 からすきまが無いように直線の向きと同じ側に次々と並べる。そして、線分のつなぎ目に自然数を対応させていく。

右向きの矢印がついた直線上に原点Oがとられ、その右側に等間隔に並ぶ点へ、左から順に1、2、3、4、5の数字と、さらに続くことを表す記号「…」が添えられている。

このようにすると、線分のつなぎ目の点として自然数を表現できる。

この自然数の図示によって生まれた、上図のような数を表す直線のことを数直線 (number line) という。数直線上のある点 について「点 に対応する数が であること」を、 と書く。たとえば、下図では点 に対応する数が であるので、 である。

右向きの直線上に等間隔で点が並び、ある点の上にO、その右側の点に1から5の数字と…が並んでいる。数字3の位置にある点の上には文字Xが添えられている。

整数

整数とは何か

自然数をものの個数と見ている限り、自然数どうしの差のうち、たとえば、 には意味が無い。 なぜなら、 個のものから 個のものを差し引くことはできないからである。

しかし、 円の貸しがある人から 円借りた場合には、差し引きが

  • (円)

の貸しになるように、 円の貸しがある人から 円借りた場合には、 自然数に符号()のついた数を考え

  • (円)

として 円の借りがあると考えると計算が便利である。

このような、自然数にマイナス()のついた数と、、自然数をあわせて整数 (integer) という。

たとえば、次の数は全て整数である。

整数の図示

整数の様子を図でみるためには、自然数のときと同じような操作を、原点 の左側にも施ほどこせばよい。

数直線上に、原点Oを表す点0を中心として、右側に1から5までの正の整数、左側に-1から-5までの負の整数が等間隔に並び、両端の外側に記号「…」が描かれている。

今後、数直線上の両端にある記号「」は省略する。

有理数

有理数とは何か

個のものを 個 組にすると、 組ができる。 この という数は、 の に対する比 (ratio) の値を表している。比の値は整数になることもあるが、 の に対する比の値、つまり、 は整数では表せない。そこで新しい数 をつくる。

一般に、整数 と、 でない整数 によって の形で表せる数を、有理数 (rational number) という。

ある整数を とすると、一般に と表すことができるので、整数は有理数である。

有理数のうち、 と などは、約分 (reduction) という作業を通じて、どちらも として同一視できる。この のように、もうこれ以上約分できない有理数のことを既約きやく分数 (irreducible fraction) という。

§

定義2有理数

整数 と でない整数 によって の形で表せる数を、有理数という。

たとえば、次の数は全て有理数である。

有理数では、 を分母とすることはない、すなわち で割り算することはないことに注意しよう。もし、仮に という数を認めて、その値が だったとしよう。割り算の意味から、 とは、 が成り立つということである。しかし、どんな数も を掛ければ になるのだから、 でもある。つまり となって、 という当たり前の事実に反してしまう(矛盾むじゅん)。これは を他の数に変えても同じである。だから、 で割ることは考えないのである。

有理数どうしの比の値

たとえば、有理数 と有理数 の比の値 は、 のように表すこともできる。このように、 の分子または分母が、さらに分数で表されているとき、この全体の分数を複ふく分数 (complex fraction) という。

複分数は、「分母にある分数の分母」と「分子にある分数の分母」の最小公倍数を分母と分子に掛けることにより、普通の分数の形(分母も分子も整数の形)になおすことができる。よって、複分数も有理数である。

の場合は、3と7の最小公倍数21を分母と分子に掛けて次のようになる。

問題1複分数

次の複分数を、普通の分数の形になおせ。

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  1. ( なので、6と10の最小公倍数30を分母と分子に掛ける)

有理数と小数

有理数は筆算により 小数 (decimal number) になおすことができる。

たとえば、次の図のような筆算を行うと

  • のように、割りきれて 有限小数 (terminating decimal) になるもの
  • のように、割り切れず 無限小数 (interminating decimal) になるもの

がある。無限小数の中でも、上の の のように、同じ数の並びが繰り返し現れるものを、特に 循環小数 (repeating decimal) という。

「有限小数」として5÷4の筆算であまりが0になり「ここでおしまい」となる計算と、「無限小数」として7÷22の筆算で同じあまりが繰り返し「ずっと続いていく…」計算が並べられている。 循環小数は、循環する部分がわかるように、記号「」(ドット)を使う。たとえば、 は と表す。

問題2有理数と循環小数

分数は小数で、小数は分数で表せ。

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  1. (割り算を実行すればよい)
  2. (割り算を実行すればよい)
  3. を分数で表すと 。約分して となる。
  4. まず とおく。循環の周期をそろえるために、これを1000倍すると となる。 より よって、 となる。

有理数の図示

を数直線上で表すには、下図のように と をつなぐ線分の2等分点をとり、その点に を対応させればよい。また、 ならば と考えて、 と をつなぐ線分を5つつないで得られる線分の右端の点を対応させればよい。

数直線上に-5から5までの目盛りがあり、原点0から1/2までの弧①と1/2の位置を示す矢印、および原点0から5/2までの弧⑤と5/2の位置を示す矢印が描かれている。

一般に、 を数直線上で表すには、まず と をつなぐ線分の 等分点をとり、そのうち原点に一番近い点に を対応させる。そして、 と をつなぐ線分を 個つないで得られる線分の端の点を、 に対応させればよい。ただし、ここでは 、 は正の整数とする。負の有理数は、整数のときと同じように、対応する正の有理数の点を原点について反対側にとればよい。

有理数の間には必ず有理数がある

例えば と の間には として、 という有理数が存在する。

一般に、2つの有理数 において とすれば、2つの有理数の間に新しい有理数を考えることができる。

3本の数直線が縦に並び、上の数直線の2点間を拡大して中央の数直線、その一部をさらに拡大して下の数直線で表している。区間を拡大するごとに、2つの点の間に新たな点が描かれている。 こうして、2つの異なる有理数をどのように選んでも、その間に必ず有理数が存在することがわかる。

2つの異なる有理数の間には必ず有理数があるのだから、これを数直線上のいろいろな場所で考えると、数直線上には有理数に対応する点がびっしり詰まっているとわかる。

原点Oを中心に-5から5までの目盛りが付けられた数直線全体に、点がびっしりと詰まっている様子が斜線で描かれている。下には「びっしり詰まった有理数のイメージ」と添えられている。

実数

無理数とは何か

さきほどの有理数の話から、数直線上にはびっしりと有理数が詰まっていることがわかった。では、今度は逆に、数直線上の点で表される値のすべてが、有理数として表せるのかについて考えてみよう。

たとえば、2辺の長さがそれぞれ である直角二等辺三角形の斜辺の長さ は、三平方の定理より ここで、 は斜辺の長さだから である。すなわち、 で表される値であるが、これは下の図のように数直線上の点として表すこともできる。

数直線上の0から1の上に1辺の長さが1の正方形があり、対角線の長さはxである。左上の頂点を中心に対角線を半径とする円弧が描かれ、数直線上の1と2の間に点√2が示されている。 では、この点に対応する有理数はあるのか、つまり、 は有理数なのだろうか。 それを次の例題で確認しよう。

暗記1有理数ではないことの証明

が有理数でないことを証明せよ。

解答を見る

が有理数であると仮定する。つまり と表される「既約きやく分数である」と仮定する。ただし、 は整数、 は でない整数である。

この両辺を2乗すると ここで、左辺は の倍数なので、右辺 も の倍数である。したがって、 も の倍数である。 が の倍数でないとすると、 ( は整数)とおけて となり、 が の倍数であることに反するからである。

そこで、 ( は整数)とおくと、 は ここで、右辺は の倍数なので、左辺 も の倍数となり、 のときと同じ理由で も の倍数となる。しかし、そうすると、、 がともに の倍数ということになり、最初の「既約分数である」という仮定に矛盾する。したがって、 は有理数ではない。

この例題からわかるように、数直線上の点として表されるような値でも、有理数ではない数が存在する。そして、その数を無理数 (irrational number) という。

循環しない無限小数

は、 乗して になる正の数である。 、 であるから は と の間にある。ここで、 、 であるから がいえる。さらに、 、 であるから がいえる。同じようにして などがいえ、 にいくらでも近い有限小数を次々に求めることができる。

これを限りなく繰り返すとき、両辺に現れる無限小数 は を表すと考えられ、この小数は循環することがない。もし、循環してしまうと が有理数になってしまう。どんな循環小数も、 のときと同じようにして分数の形になおすことができ、有理数だからである。

なお、無理数の近似値を筆算によって求める方法については、『開平法について』を参照せよ。

実数とは何か

数直線上の点として表される数、すなわち有理数と無理数をあわせた数を実数 (real number) という。

有理数と無理数を考えることにより、数直線上の点はすきま無くみっちり埋まる。

たとえば などは、どれも無理数である。また も無理数であることが知られている。

今後、、、 など、文字で数を表すとき、特にことわりが無ければ、その数は実数であるとする。

以上見てきたいろいろな数について、まとめると次のようになる。

  • 自然数はすべて整数であり、整数はすべて有理数である。
  • 有理数と無理数をあわせたものが実数である。
数直線上に-5から5までの整数とともに、-2と-1の間に-√3、1と2の間に√2、3と4の間にπが示されており、下に「みっちり詰まった実数のイメージ」と書かれている。

以上のいろいろな数の関係は、次の図のように整理できる。

内側から順に自然数、整数、有理数、実数と入れ子になった枠で、数の包含関係が表されている。各領域には 1 や -2、2/3 などの例が添えられ、有理数の枠の外かつ実数の枠の内には、無理数として √2 や π が置かれている。

問題3数の分類

次の実数について、以下の問に答えよ。

  1. 自然数を選べ。
  2. 整数を選べ。
  3. 有理数を選べ。
  4. 無理数を選べ。
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絶対値

絶対値とは何か

数直線上で、原点 と点 の距離のことを の絶対値 (absolute value) といい、 と書く。たとえば である。

数直線上に原点O(0)と点Aが描かれている。点Aの位置が2のときはOとの距離が2、点Aの位置が-4のときはOとの距離が4であることが表されている。 この例からわかるように

  • 正の数はその値がそのまま絶対値となり、
  • 負の数は符号を変えた数が絶対値となる。

符号を変えるには、 倍すればよい。たとえば、 を に変えるには とすればよい。まとめると次のようになる。

§

定義3絶対値

は場合に分けて と表すことができる。絶対値について が成り立つ。

数直線上の2点 と の距離 は、 のときでも、 のときでも、ともに で表すことができる。

上下に2本の数直線があり、上の数直線では左側の点A(a)と右側の点B(b)の距離がb-a、下の数直線では左側の点B(b)と右側の点A(a)の距離がa-bと示されている。
§

定理4絶対値の性質

、 に関して次の等式が成り立つ。ただし、(3)では とする。

(1) 2乗すると絶対値は丸くなる(括弧になる)
(2) 絶対値は積で切れる・つながる
(3) 絶対値は商で切れる・つながる
証明を見る
証明

絶対値の中身が「 以上か」「負か」で、絶対値の外れ方が違ってくるので、場合に分けて証明する。

    • a) のとき、 であるから
    • b) のとき、 であるから

    以上a)、b)より、 が成り立つ。

  1. 、 の符号によって、次の4つの場合に分けて考える。

      1. 、 のとき

      、 、 であるから となり成立。

      1. 、 のとき

      、 、 であるから となり成立。

      1. 、 のとき

      2)の証明において、 と を入れ替えれば3)の証明になっているので、成立する。

      1. 、 のとき

      、 、 であるから

    以上より、いずれの場合も が成り立つ。

  2. まず、 であることを示す。

    • a) のとき

      、 であるから となり成立。

    • b) のとき

      、 であるから となり成立。

    以上a)、b)より が成立。これより となり、 が成り立つ。

∎

問題4絶対値

次の値を求めよ。

解答を見る
  1. であるから、 。よって

  2. であるから、 。よって

最終更新: 2026-08-20

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