数学B 第5章 平面ベクトルと平面図形 — ベクトルの内積

ベクトルの正射影

ベクトルのなす角の定義

でない2 つの に対して,点 を始点として

となるように点 をとる.このとき, の大きさ は, によって決まる.この を,なす角(included angle) という.

離れた位置にある2つのベクトルaとベクトルbが描かれています。右下には緩やかな右上向きのベクトルaが、左上にはより急な右上向きのベクトルbが配置されています。 のなす角は, が同じ向きのときは であり, 向きがすれるにつれだんだん大きくなり, が開ききって互いに逆向きとなるとき となる.

点Oを共通の始点として、点Aへ向かうベクトルaと、点Bへ向かうベクトルbが伸びている。2つのベクトルのなす角∠AOBの大きさがθで示されている。 共通の始点から伸びる2つのベクトルのなす角θが、同じ向きのθ=0°から鋭角、鈍角を経て、互いに逆向きのθ=180°まで順に大きくなる4つの様子が横に並んでいる。

それ以上ベクトルが開いたときには,角度の狭いほうをなす角とするので, のなす角 の取り得る範囲は となる.

ベクトルの正射影と有向距離

点Oを始点とするベクトルa,ベクトルbがあり,そのなす角はθである。点Bから直線OAに下ろした垂線の足をHとするとき,点Oから点Hに向かう太い矢印でベクトルOHが描かれている。

でない2 つの に対して,点 を始点として

となるように点 をとる.

いま,上の図の点 からから直線 に下ろした垂線の足を とする.このとき, への正射影(orthogonal projection) ベクトルといい と表す.正射影ベクトル は, とそのなす角を用いて次のように表すことができる.

  1. のとき

    点Oを始点とするベクトルa(ベクトルOA)とベクトルb(ベクトルOB)のなす角が鋭角θで示されている。点Bから直線OAに下ろした垂線の足をHとするとき、ベクトルOHが描かれている。

  2. のとき

    点Oを始点として、右上の点Aへ向かうベクトルaと左上の点Bへ向かうベクトルbが伸び、なす角θは鈍角になっている。点Bから直線OAに下ろした垂線の足Hは、Oから見てAと反対側にあり、OからHへ向かう太い矢印が描かれている。

つまり, と表せる.このの値のことを,有向距離または符号付長さという.

なお, の大きさは

で表される.

【例】

マス目の一辺の長さが1の方眼上に、共通の始点をもつ6つのベクトルa、b、c、d、e、fが描かれている。水平で右向きの太いベクトルaに対し、他のベクトルは様々な方向に伸びている。

ますめの一辺の長さが1 の上の図において

  1. の有向距離は
  2. の有向距離は
  3. の有向距離は
  4. の有向距離は
  5. の有向距離は

となる.

ベクトルの内積

ベクトルの内積の定義

任意の2 つのベクトル, に対して内積(inner product)という演算 を次のように定義する.

  1. かつ のとき

    の大きさに, の有向距離をかけたもの」,すなわち

    とする.ここで, のなす角である.

  2. または のとき

    とする.

始点を共有するベクトルaとベクトルbがあり、そのなす角はθである。ベクトルbの終点からベクトルaへ下ろした垂線の足までの長さが|ベクトルb|cosθ、ベクトルaの長さが|ベクトルa|と示されている。
§

定義1ベクトルの内積

に対して,内積

とする.ここで, のなす角である.

また, または のとき, とする.

正射影ベクトルの内積での表し方

への正射影ベクトル

と表すことができる.

共通の始点からなす角θで伸びるベクトルaとベクトルbがある。ベクトルbの終点からベクトルaへ垂線が下ろされ、始点から垂線の足までのベクトルb_→aが太い矢印で示されている。

内積の計算法則

ベクトルの内積に関して,次の計算法則が成り立つ.

§

定理2内積に関する計算法則

  1. 交換法則
  2. 結合法則
  3. 分配法則
証明

ゼロベクトルを含む場合の成立は明らかなので,以下ベクトルはすべてゼロベクトルでないとする.

  1. 共通の始点から伸びるベクトルaとベクトルbがなす角θをつくり、互いの先から相手へ垂線が下ろされている。始点から垂線の足までの長さがそれぞれ|b|cosθ、|a|cosθと書かれ、aとbの大きさ|a|、|b|も示されている。

    のなす角を とすると

    より,

  2. 水平で右向きのベクトルaと、始点を共有して右上に伸びるベクトルb、およびbのk倍のベクトルkbが描かれている。bとkbの先から直線aへ垂線が下ろされ、それぞれの正射影ベクトルがa上に太い矢印で並べて示されている。

    上の図において, より

    だから,係数を比較して

  3. 水平で右向きのベクトルaがあり、始点から伸びるベクトルbの先にベクトルcをつないで和b+cをつくっている。b、c、b+cのそれぞれをaへ正射影した太い矢印がa上に並び、bの分とcの分を足すとb+cの分になることが示されている。

    上の図において, より

    だから,係数を比較して

  4. 等しいベクトルどうしのなす角は であるから

    等号成立は ,つまり のときに限る.

問題1内積の計算法則

次の計算が成り立つことを,内積の定義および内積の計算法則1.~3.を用いて証明せよ.なお,2. を証明する際には1. を使ってよい.

解答を見る

問題2意味のある演算とない演算

次に表す式のうち,無意味なものには×を,意味のあるものには○つけよ.

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  1. (×) はベクトルで は実数.よって,ベクトルと実数の和となり無意味である.
  2. (○) は実数で はベクトル.よって, 倍の意味をもつ.
  3. (×)2 つののうち,どちらを内積の記号とみるかで意味するものが異なるので無意味である.
  4. (○) は実数で はベクトル.よって, 倍の意味をもつ.
  5. (×)ベクトルに除法はないので,分母に がある時点で無意味である.
  6. (○) は実数で も実数であるのでその比を表す.

成分表示された平面ベクトルの内積

成分表示された2 つのベクトル, の内積について考えてみよう.

まず, という2 つのベクトル(基本ベクトル(fundamental vector) )をとる.それぞれのベクトルの大きさは であり,なす角は であるから

が成り立つ.

ここで,

であるから, に分解すると

となる.

同様にして

となる.

よって, より

となる.

§

定理3成分表示されたベクトルの内積

のとき

となる.

暗記1ベクトルを用いた三角形の面積公式

次の図のように, で張られる三角形の面積をとする.

  1. を用いて表せ.
  2. であるとき, を用いて表せ.
  3. 座標平面上に3 点 をとる.このとき, の面積を求めよ.
同じ始点から伸びる2つのベクトルaとベクトルbが描かれており、各ベクトルの終点どうしが破線で結ばれることで1つの三角形がつくられている。
解答を見る
  1. 共通の始点から伸びるベクトルaとベクトルbがなす角θをつくり、両者の先を結ぶ破線で三角形ができている。底辺となるaの長さ|a|と、bの先から底辺へ下ろした高さ|b|sinθが太線で書き込まれている。

    のなす角を とおき, を三角形の底辺とみると,高さは とかけるから,三角形の面積

    よって, と表せる.

  2. のとき

    であるから, に代入して

    よって, と表せる.

  3. より, の面積

§

定理4ベクトルを用いた三角形の面積公式

のとき, で張られる三角形の面積

ベクトルの垂直条件

でない2 つのベクトル, のなす角が とき,垂直(perpendicular) であるといい, と表す.また, はすべてのベクトルに対し垂直と定める.

このとき, の内積は, となる.逆に, ならば といえる.つまり

である.

また,成分表示された2 つのベクトル, が垂直であるとき

が成り立つ.

§

定理5ベクトルの垂直条件

であり, とする.

問題3外心の位置ベクトル

である がある. の外心を とするとき,以下の問いに答えよ.

  1. を求めよ.
  2. をもちいて表せ.
解答を見る
  1. からみる余弦定理を使うと

    であるから

  2. △ABCにおいて、辺ABの中点Dを通る垂直二等分線と辺ACの中点Eを通る垂直二等分線の交点をOとし、点Aから延びるベクトルAB、ベクトルAC、ベクトルAOが描かれている。

    の中点を,辺 の中点を とする.外心 を満たすから, は辺 の垂直二等分線上にも,辺 の垂直二等分線上にもある.

    とおく.

    まず, は直交するから

    また, は直交するから

    を連立して

    \begin{eqnarray} \left{ \right. \Longleftrightarrow \left{ \right. \end{eqnarray}

    よって,

問題4垂心の位置ベクトル

である がある. の垂心を とするとき,以下の問いに答えよ.

  1. を求めよ.
  2. をもちいて表せ.
解答1を見る
  1. からにらむ余弦定理を使うと

    であるから,

  2. 三角形ABCがあり、頂点Aから点B、C、Hに向かう3つの矢印が描かれている。辺AB上の点Dへの垂線CDと、辺AC上の点Eへの垂線BEの交点が点Hとなっている。

    とおく.

    まず, は直交するから

    また, は直交するから

    を連立して

    \begin{eqnarray} \left{ \right. \Longleftrightarrow \left{ \right. \end{eqnarray}

    よって,

解答2を見る
  1. (【解答1】と同じ)

  2. ベクトルの正射影を考え

    △ABCの内部に点Hがあり、点AからB、C、Hおよび辺AB上の点D、辺AC上の点Eへのベクトルが描かれています。点Hから辺AB、ACへ下ろした垂線HD、HEが点線で示されています。

    から辺 に下ろした垂線の足を,点 から辺 に下ろした垂線の足を とすると,垂心 は線分 と線分 の交点である. への正射影ベクトルであるから

    同様にして

    である.

    まず,点 は線分 上にあるから, とおくと

    また,点 は線分 上にあるから, とおくと

    いま, は1 次独立であるから, より

    よって,

最終更新: 2026-08-12

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