数学A 第2章 確率 — 加法定理と排反事象

この節の前提確率とは何か/数学I集合の要素の個数

さいころ投げにおいて、例えば「偶数の目が出る」という事象と「3以下の目が出る」という事象には共通している事象、つまり「2の目が出る」という事象がある。このように、2つの事象において、共通の事象がある場合や、無い場合について、ここでは整理してみる。

和事象と積事象

和事象と積事象について

さいころを1回投げる試行を考えよう。この試行において、標本空間 を

とすると、「偶数の目が出る」という事象 、「3以下の目が出る」という事象 は

と表すことができる。

いま、「偶数の目が出るか、または、3以下の目が出る」という事象は、 と の和集合で

と表すことができる。

また、「偶数の目が出て、かつ、3以下の目が出る」という事象は、 と の共通部分で

と表すことができる。

§

定義1和事象と積事象

標本空間 の部分集合で表される2つの事象 において「 または 」を と の

和事象(sum event)

という。和事象は和集合 で表される(図参照).

全体集合Uを表す長方形の枠内に、一部が重なり合って配置された2つの円AとBが描かれている。円Aと円Bの双方を合わせた領域全体に斜線が引かれている。

また「 かつ 」を と の

積事象(product event)

という。積事象は共通部分 で表される (図参照).

標本空間Uを表す長方形の中に、一部が重なり合う2つの円AとBが描かれており、それらの共通部分に斜線が引かれている。

加法定理と排反事象について

加法定理

ある試行の標本空間 と、事象 について考える。

事象 に包含と排除の原理を用いると

が成り立つ。根元事象が同様に確からしい場合、 であるから、この両辺を標本空間 の根元事象の個数 で割ると

が成り立つ。

この のことを、確率の加法定理(addition theorem)という。

全体集合 U を表す長方形の中に、一部が重なり合う2つの円 A と B が描かれている。その2つの円を合わせた和集合 A∪B にあたる領域全体に、斜線が引かれている。
§

定理2加法定理

ある試行における事象 について

が成り立つ。

問題1加法定理

2個のさいころ を同時に投げるとする。 さいころ で3の目が出るか、またはさいころ で3の目が出る確率を求めよ。

解答を見る

:「 のさいころで3の目が出る」

:「 のさいころで3の目が出る」

とすると、求める確率は である。

まず、2つのさいころの目の出方は 通りあり、これらはどれも同様に確からしい。

このうち、さいころ で3の目が出るのは6通り、さいころ で3の目が出るのも6通りであるから、 は

である。

また、ともに3の目となるのは1通りであるから、 は

となる。

以上より

排反事象

さいころを1回投げる試行において、偶数の目が出る事象 と、奇数の目が出る事象 は同時に起こることがない。別のいいかたをすれば、同時に起こらない事象の積事象は、次のように空事象になる。

一般に、2つの事象 が同時に起こることがないとき、 と は互いに排反はいはん(exclusive)である、または、排反事象(exclusive event)であるという。このとき、 と の積事象は空事象である。

全体集合Uを表す長方形の中に、事象Aを表す円が左に、事象Bを表す円が右に、互いに離れて描かれていて、2つの円に共通部分が無いことを示している。
§

定理3排反事象の加法定理

事象 において、 と が同時に起こらないとき、すなわち

が成り立つとき、 と は互いに排反であるという。

また、このとき であるから、加法定理より

が成り立つ。

3つ以上の事象でも、どの2つも互いに排反であるとき、それらの事象は排反であるという。

たとえば3つの事象 が互いに排反であるとき

が成り立つ(4つ以上のときも同様である)。

問題2排反事象~その1~

ジョーカーを含まない52枚のトランプの中から1枚のカードを引く。ただし、J、Q、Kはそれぞれ11、12、13とし、エースは1と数えるものとする。

事象 を

: のカードを引く : のカードを引く

: 3のカードを引く : 10以上のカードを引く

とする。次のうち、排反事象となるものをすべて選べ。

  1. と
  2. と
  3. と
  4. と
解答を見る
  1. であり、 であるカードは存在しない、つまり同時に起こりえないので、 と は排反である。
  2. であり、3であるカードは存在する( の3)、つまり同時に起こりえるので、 と は排反ではない。
  3. 3であり、10以上であるカードは存在しない、つまり同時に起こりえないので、 と は排反である。
  4. 10以上であり、 であるカードは存在する(例えば のJ)、つまり同時に起こりえるので、 と は排反ではない。

以上より、排反事象となるのは1. と3. である。

問題3排反事象~その2~

10本のくじの中に当りくじが3本ある。この中から4本のくじを同時に引くとき、 少なくとも2本の当りくじを引く確率を求めよ。

解答を見る

少なくとも2本の当りくじを引くのは、2本の当りくじを引く場合と、3本の当りくじを引く場合があり、

これらは排反な事象である。

まず、10本のくじの中から4本のくじを引く組合せの 通りは、どれも同様に確からしい。

このうち、2本の当りくじと2本のはずれくじを引く場合は

通り

あり、3本の当りくじと1本のはずれくじを引く場合は

通り

ある.

よって、求める確率は

余事象とその確率

余事象

事象 に対して、“ が起こらない”という事象を の余事象(complementary event)といい、 で表す。余事象 は、事象 を表す集合 の補集合 で表される。

余事象 のさらに余事象は、“ が起こる”という事象 にもどる。

事象 と は互いに排反で、それらの和事象 は標本空間 である。

余事象の確率

補集合の要素の個数より

が成り立つ。根元事象が同様に確からしい場合、 であるから、この両辺を で割ると

が成り立つ。

全事象Uを表す長方形の中に事象Aを表す円があり、円の外側全体に斜線が引かれていて、その斜線部分にAの上に横線がついた記号が示されている。
§

定理4余事象の確率

事象 と、その余事象 において

が成り立つ。

問題4余事象

3つのさいころを同時に振るとき、少なくとも1つのさいころで3の倍数の目が出る確率を求めよ。

解答を見る

事象 を

:「3つのさいころで3の倍数の目が出ない」

とおくと、求める確率は である。

3つのさいころの目の重複順列 通りは、どれも同様に確からしい。

このうち、3の倍数の目がまったく出ないのは(3の倍数でない目が1、2、4、5と4つあるので)

通り

よって、3の倍数の目が出ない確率 は

求める確率は なので

となる。

最終更新: 2026-09-03

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